
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
先輩も…。野嶋も?
野嶋はスパイクを脱いで、ランシューに
履き替えて部室に走っていった。
僕は何も言えなかった。
野嶋の言うひとことひとこと、全部正しくて。
全部心に沁みて。
桐野の気持ちも、無駄にしたくなくて。
正直であり、真摯でいることが時に人を
傷つけることもある。
傷ついたり、傷つけたりして僕らは
人の気持ちを理解していく。
それが故意でなかったとしても、気づいた時
立ち止まって見つめたくなる気持ちがある。
僕は部室に、野嶋を追ってダッシュした。
「野嶋…」
「…はい」
僕は小さな野嶋を抱きしめた。
これが正しいかどうかなんて、わからない。
でも。
「ごめん。正直に言うことが、野嶋を傷つけるかもしれないけど…でもおれ、野嶋には誠実でいたい。野嶋がそうであってくれたみたいに」
「小野塚先輩…」
「おれ、誰から何て言われても、たぶん気持ち変わらない。野嶋のことも、後輩としか見られない。彼女…のぞみに対しては、いつも誠実でいたい。いつか、一緒に生きれない時が来るかもしれないけど、それまでは絶対に。でも、いま、今は野嶋がすごく気になる。こうしたかったから、いまめっちゃダッシュかました。多分自己ベスト出たかも知れない。それくらい、野嶋のこと、追いかけた。それが本当の気持ち…それでまた野嶋を傷つけて困らせる」
「…うん。傷ついた。…すごく」
「だから、ごめん」
「いま、先輩、私のこと小さい野嶋って思ってる…小さい野嶋を傷つけたこと、先輩はきっとずっと忘れないからね…私、先輩の記憶に残るんだからね…」
野嶋は僕の背中をぎゅっとつかんで、胸の少し
下のほうに頬っぺたを当ててしゃべった。
野嶋の声が体に響いた。
「ありがとう。桐野も、野嶋も」
野嶋はスパイクを脱いで、ランシューに
履き替えて部室に走っていった。
僕は何も言えなかった。
野嶋の言うひとことひとこと、全部正しくて。
全部心に沁みて。
桐野の気持ちも、無駄にしたくなくて。
正直であり、真摯でいることが時に人を
傷つけることもある。
傷ついたり、傷つけたりして僕らは
人の気持ちを理解していく。
それが故意でなかったとしても、気づいた時
立ち止まって見つめたくなる気持ちがある。
僕は部室に、野嶋を追ってダッシュした。
「野嶋…」
「…はい」
僕は小さな野嶋を抱きしめた。
これが正しいかどうかなんて、わからない。
でも。
「ごめん。正直に言うことが、野嶋を傷つけるかもしれないけど…でもおれ、野嶋には誠実でいたい。野嶋がそうであってくれたみたいに」
「小野塚先輩…」
「おれ、誰から何て言われても、たぶん気持ち変わらない。野嶋のことも、後輩としか見られない。彼女…のぞみに対しては、いつも誠実でいたい。いつか、一緒に生きれない時が来るかもしれないけど、それまでは絶対に。でも、いま、今は野嶋がすごく気になる。こうしたかったから、いまめっちゃダッシュかました。多分自己ベスト出たかも知れない。それくらい、野嶋のこと、追いかけた。それが本当の気持ち…それでまた野嶋を傷つけて困らせる」
「…うん。傷ついた。…すごく」
「だから、ごめん」
「いま、先輩、私のこと小さい野嶋って思ってる…小さい野嶋を傷つけたこと、先輩はきっとずっと忘れないからね…私、先輩の記憶に残るんだからね…」
野嶋は僕の背中をぎゅっとつかんで、胸の少し
下のほうに頬っぺたを当ててしゃべった。
野嶋の声が体に響いた。
「ありがとう。桐野も、野嶋も」
