
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「桐野先輩はいつも『同中の小野塚ってやつが』『ほらまた、小野塚がグラウンド見てる』って、最初に先輩を見つけたのは、桐野先輩なんです。陸上辞めた小野塚先輩のこと気にしてた。絶対辞めたくなかったのに、何か理由があったんだ、って。だからもしそのことが解決したんならまた一緒に走りたいって、いつも言ってた。でも小野塚はそういうの人に言われるのを一番嫌うから、おれは何にも言えないんだ、って。でも絶対いつか話してくれるって」
「桐野が…?」
「すごくすごく、小野塚先輩のこと気にしてました。なのに、そんな正直に私の聞いたことに答えたり、誰もが見とれる走りをしたり。桐野先輩が小野塚先輩には勝てないって思っちゃうじゃないですか」
「それは…」
「私、うちのめされたんです。小野塚先輩が走るのを見て。桐野先輩がいつも言ってた、スプリンターの才能ってのは小野塚のことを言うんだ、って意味が分かったんです。…そしたら私、小野塚先輩を好きになってた。私だって、同じなんです。桐野先輩を傷つけたんです!正直でありたいと思ったばっかりに…桐野先輩を傷つけた…」
何でだろう。
この子にはいきなり本音をぶつけた。
ぶつけられた。
「桐野先輩を傷つけてまで、私は小野塚先輩を好きになったんです。だから、諦めたくない」
こんなに一生懸命なやつ、みたことない。
ずっと、グラウンドを見ていた。
でも、野嶋に想いを告白されてからは
グラウンドにいる野嶋を見ていた。
気になっていた。
いつも黙々と跳ぶ野嶋が。
僕のことを好きだと言った野嶋が。
「…そんな気持ちが、記録を伸ばすんです。小野塚先輩みたいに、なりたいと思うから」
「おれ、そんなすごくないよ」
「…全部、諦めたくないんでしょ?先輩も」
「桐野が…?」
「すごくすごく、小野塚先輩のこと気にしてました。なのに、そんな正直に私の聞いたことに答えたり、誰もが見とれる走りをしたり。桐野先輩が小野塚先輩には勝てないって思っちゃうじゃないですか」
「それは…」
「私、うちのめされたんです。小野塚先輩が走るのを見て。桐野先輩がいつも言ってた、スプリンターの才能ってのは小野塚のことを言うんだ、って意味が分かったんです。…そしたら私、小野塚先輩を好きになってた。私だって、同じなんです。桐野先輩を傷つけたんです!正直でありたいと思ったばっかりに…桐野先輩を傷つけた…」
何でだろう。
この子にはいきなり本音をぶつけた。
ぶつけられた。
「桐野先輩を傷つけてまで、私は小野塚先輩を好きになったんです。だから、諦めたくない」
こんなに一生懸命なやつ、みたことない。
ずっと、グラウンドを見ていた。
でも、野嶋に想いを告白されてからは
グラウンドにいる野嶋を見ていた。
気になっていた。
いつも黙々と跳ぶ野嶋が。
僕のことを好きだと言った野嶋が。
「…そんな気持ちが、記録を伸ばすんです。小野塚先輩みたいに、なりたいと思うから」
「おれ、そんなすごくないよ」
「…全部、諦めたくないんでしょ?先輩も」
