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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「流星っ!もっと脚あげろ!」

さっきから通りすがりに川辺先生がやたらと
僕の走り方に注意をしてくる。
ゴールデンウィークの学校は部活の音が
響いていた。
グラウンドは時間を分けて使うことに
なっているので、今は陸上部とサッカー部が
アップしていた。

「先生ー、僕、部員じゃないっすよ。勝手に走ってるだけ!」

100mを流して戻ってくると、先生は
ストレッチをしていた。自分も走るつもりだ。

「部員じゃなくても、走るんだったら効率的に走れ」
「うぃーす…」

最近では、なれなれしい態度をとってしまう
ほどだ。数学の授業、進路指導、陸上部。
一日中川辺先生と絡んでいることも珍しくない。不思議と何でも話せてしまう雰囲気がある。

「なあ桐野」
「ん?」

同じように、200を流してきた桐野に
話しかけた。

「みんな、おれが勝手に走ったりするの、何も言ってない?」
「…いや、何も。ていうかみんな、なんていうかおまえがいるからモチベーション上がってるって言うか…。あの100のタイムの破壊力?すげーよ」

そうなんだ。ふーん…。
桐野は笑いながら、後輩たちに休憩するよう
言って回った。
単純に居心地が、よかった。

「好きなんだろ、おまえのこと」
「だ、誰がっ!?」
「陸上部のやつら。…なに焦ってんだよ。誰かに告られたのか?」
「…いや。あー…」
「誰だよ」

桐野が面白そうに食いついてきた。実は今朝
部員たちが練習を始める前に準備をしていると
2年生の女の子に話があると言われた。
その子は幅跳びをやっている子で、
何度か話したことがあった。
大きな目が印象的で、いつも頭のてっぺんで
髪をまとめていた。
小柄で身軽なのか結構跳ぶんだ、と川辺先生が
言っていた。

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