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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

春が来て、僕らは三年生になった。

「きりーつ」

今年もまた担任はヤマセンだ。アツい割りに
うっとうしくなく、生徒との距離が絶妙だ。

「もう言わなくてもわかってるだろうから、言わないぞー。それとも言ってほしいか?」

ヤマセンは黒板に4月の予定を書き出しながら
そう言った。

「言ってくださーい!」

その声に、教室が低い笑い声に包まれる。
去年とほとんど同じメンバーと、ヤマセンと。
楽しくなりそうだ。

「とにかく、勉強しろ。以上!…あ、進路指導の先生がかわったから。大学院出たばっかりの、若い、ピッチピチの…」
「マジですか?!」
「…おまえら、本っ当に飢えてんな。そのパワー、使い途間違えるなよ。はいわかったら体育館へ行く!」

だらだらと、階段を降りているとC組と
合流した。無意識にのぞみを探した。

「流星っ!」
「あ、のぞみ!」

踊り場でのぞみが待っていてくれた。
ヤバイ、やっぱりいつ見てもかわいい。

「今日は走ってく?」

僕は、ほぼ毎日陸上部に混ざって走っていた。
のぞみも塾に通い始めて、会える時間は
少なくなっていた。

「うん。走る。帰ったら電話するよ」
「うん。待ってる」

それだけなのに、めちゃくちゃやる気が出る。
男とは、びっくりするくらい単純な生き物だ。
始業式なんて、誰も真剣に聞いちゃいない。
ただ新任の先生の紹介となると一応注目
したりする。

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