テキストサイズ

20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

わだかまっているのもよくないと思って、
僕は走りながら色々考えていた。

「この間、嫌な思いさせたんなら、悪かったな」
「え?この間…?どれ?」

う、そこは察してくれよ。
あれを言葉で説明しろと…?

「あの、だから。ここで…」
「あ…うん」
「ああいうの、もうやめん?やっぱり良くないよ。まだ、高校生だし。…のぞみ傷つけるの、嫌だし…」

正直な気持ちだった。
もしかしたら、もう十分傷つけているかも
知れない。

「…嫌で泣いたんじゃないよ…」
「え?」

のぞみはうつむいて、真っ赤になっていた。
髪が横顔を隠していたけれど、
その隙間からでも見えるくらいに。

「嫌だったら嫌って言うよ。…うれしかったの…流星が…あんなこと…」
「…もういい。言わなくていいから!」

僕のほうが恥ずかしかった。
自分が思っていたことと、のぞみが言っていることは違っていた。
『うれしかった』と思っていたなんて、
かけらも考えなかった。

「流星は嫌だったの…?だから…」
「んなわけないだろ!」

嫌なわけ、ないだろ。あんなこと続けてたら
すぐに…

「おれ、自分を抑えきる自信ない」

別にそればっかり考えているわけじゃない。
勉強とか陸上とか大学とか。
考えることやしなければならないことは、
山ほどある。
だけど、のぞみとそんな関係になったら
冷静でいられる自信はない。
今でも十分『そんな関係』なのかもしれない
けれど、やっぱり違うんだ。

「おれ、そんな大人じゃない…おれのしょーもない理性なんて、のぞみの前では全っ然、ないに等しいんだよ!」

目の前で、のぞみはまっすぐ僕を見ていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ