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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

期末テストも、来年のクラス分けテストも
終わり、冬休みまでの10日間、学校は
自由登校になった。
希望者は好きな教科の補習を受けることが
できる。
みんな選択している科目の時間に合わせて
学校にやってくる。
補習は、 全クラス混合で授業が行われる。一応レベル設定はされているが、どこに
参加しようと自由だ。
僕は苦手な英語は少しレベルを下げていた。
のぞみと同じクラスだった。

「あ、流星。英語、Aじゃなかったんだ」

隣の席にかばんを置いたのぞみは、
昨日のことなどまるで気にしていないかの
ように、問題集やノートを準備し始めた。

「うん。最近長文が伸び悩んでるから」
「そっか。言ってたよね」

補習は何となく上の空だった。
グラウンドから聞こえる、野球部の掛け声が
やたらと耳についた。

「…じゃあこれ、最後のプリントな。これ終わったもんから帰ってよし。明日は29ページから」

教室の中は、誰も私語などせず、
時々まわってくる先生に質問する小さな声が
聞こえるだけだ。
半分くらい埋まった席の間に、シャーペンの
走る音がひびく。
のぞみの手元を見ると、問題の中程にペンを
走らせていた。
長い英作文のところだ。
僕は、解答用紙の余白に『先に帰る』と書いて
それを破り、のぞみの机に置いた。
静かな冬の廊下に出ると、僕はグラウンドに
向かって階段をかけ下りた。

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