
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
のぞみを家まで送る間、僕らは無言だった。
いつもなら、手をつないで、余韻に浸って、
他愛ない話をしながら短い距離を歩くのに。
初めて、あんなことした。
…したかったんだ。のぞみに。
「…ただいま」
明かりのついていない玄関を開けた。
家族はまだ誰も帰っていなかった。
暗い階段をあがり部屋のドアを開けると、
付けたままの電気が煌々と明かりを
放っていた。
僕は床に座り込み、折り畳みのテーブルに
突っ伏した。
「のぞみ…」
好きで、好きでたまらない。
力加減がわからずに、つい抱きしめすぎて
しまう。
キスをしたり、手をつないだり、勉強している
横顔を盗み見してドキドキするだけで、
どうして物足りなくなったのだろう。
あの、今年最後の台風が過ぎた翌日、
学校からの帰り道。
前日までとは全く違う乾いた風が
僕とのぞみの間を吹き抜けた。
その風に、季節の移り変わりを感じていた
のぞみの表情が、僕を欲情させた。
ひんやりと、音のない自分の家がいつもと
違って見えた。
黙って僕のあとについて階段を上がってくる
のぞみは、どんな顔をしているのか
わからなかった。
後ろ手でドアを閉めた僕は、何も言わずに
のぞみの手を引き、ベッドに横たえた。
あの日から、好きだと思う気持ちは
降りやまない。
積もる一方だ。
いつか、この気持ちに埋もれてしまいそうで
こわい。
僕はのぞみのやわらかさを思い出していた。
か細い叫びを思い出していた。
その時、部屋のドアが開いた。
いつもなら、手をつないで、余韻に浸って、
他愛ない話をしながら短い距離を歩くのに。
初めて、あんなことした。
…したかったんだ。のぞみに。
「…ただいま」
明かりのついていない玄関を開けた。
家族はまだ誰も帰っていなかった。
暗い階段をあがり部屋のドアを開けると、
付けたままの電気が煌々と明かりを
放っていた。
僕は床に座り込み、折り畳みのテーブルに
突っ伏した。
「のぞみ…」
好きで、好きでたまらない。
力加減がわからずに、つい抱きしめすぎて
しまう。
キスをしたり、手をつないだり、勉強している
横顔を盗み見してドキドキするだけで、
どうして物足りなくなったのだろう。
あの、今年最後の台風が過ぎた翌日、
学校からの帰り道。
前日までとは全く違う乾いた風が
僕とのぞみの間を吹き抜けた。
その風に、季節の移り変わりを感じていた
のぞみの表情が、僕を欲情させた。
ひんやりと、音のない自分の家がいつもと
違って見えた。
黙って僕のあとについて階段を上がってくる
のぞみは、どんな顔をしているのか
わからなかった。
後ろ手でドアを閉めた僕は、何も言わずに
のぞみの手を引き、ベッドに横たえた。
あの日から、好きだと思う気持ちは
降りやまない。
積もる一方だ。
いつか、この気持ちに埋もれてしまいそうで
こわい。
僕はのぞみのやわらかさを思い出していた。
か細い叫びを思い出していた。
その時、部屋のドアが開いた。
