
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「何だろ…大学受かる頭?」
「あー…欲しい欲しい」
「身長」
「もういいじゃん。十分」
「のぞみ」
「え?」
「いや、忘れて」
しまった…思わず本音が。
ていうか、スルーされたな。
それはそれで複雑だな。
「お揃いの何か、買うよ」
「あ、うん。お揃い、いいな」
持ち物交換の次は、お揃いか。
のぞみはやっぱり女の子なんだな。
そのとき、突然去年の冬の場面がよみがえって
きた。
薄明かりのなか、僕はのぞみのブラウスの
ボタンを外し…ダメだ。
ここは図書館だ!思い出すな!
「お揃いのかばんとか、ベストとか、学校で使えるものがいいよね」
「あ、そーだな。いいよな」
「なんか上の空だよ?」
「だ、大丈夫!うん」
僕はいま、目の前の問題を一問でも多く
解くしかないんだ。
直角三角形を作り、ピタゴラスの定理を用いて
斜辺を求めるのが先なんだ!
「おっまえ、涙ぐましい努力してんだな。頭いいのに本っ当要領よくないっていうか…」
のぞみと図書館で勉強したあと、何となく
このまま家に帰って姉ちゃんや母さんの顔を
見たくなくて、要の家に寄った。
「…そうだよ。おれだって、おまえみたいに上手く立ち回りたいよ。大体さ、おれこんな勉強してクラスのトップを死守しても、所詮地方の公立高校生じゃん?頑張って大学行っても、絶っっ対、普っ通ーの人生歩くんだって」
「うわ、流星がやさぐれてる…」
「おれだって、おれだってさあ…」
「わかったわかった。流星はさ、ピュアなんだよ。全部一生懸命になりすぎんだよ。勉強も恋愛も、夢とか将来とか」
「一生懸命ならんで、どうすんだよ」
「ほらな」
「もうちょい、手抜きしろ」
「手抜き…」
