
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「おはよ」
「…うす」
コンバースのオールスターをつっこんで
靴箱の扉を勢いよく閉めると、紺野が一瞬
びくついた。
「あ、ごめん。これ曲がってるんだ。こうやって閉めないと」
「うん。あ…」
「…何?」
「昨日の教科書の…」
「ああ」
「また告っちゃいました…もう、言いたいだけ?みたいな!あははは!」
「は…おまえ、軽っ!」
「軽い?うん、超ライト!」
後ろから階段を昇る紺野の足音が聞こえた。
…足取りが、軽い。
「あ、小野塚!ヤマセンが探してたよ。数学準備室来いって」
「おう、サンキュ。何だろ…」
すれ違った、クラスの友達が言った。
ヤマセン、とは担任の山田先生のことで
生徒とは、やたらと先生の名前を略したがる
ものだ。
「失礼しまーす」
「小野塚!こっちこっち!」
あと10分で予鈴鳴るんだけどな。
数学準備室に入るとヤマセンと見たことのない
若い男の人がソファに座って手招きしていた。
「あ。こいつ小野塚。うちの理数科で、数学はトップ」
ヤマセンが僕をそんな風に紹介した。
数学『は』、ね。
化学もトップあたりだけどな。
「初めまして。川辺といいます。K大大学院数理科学領域で微分方程式の研究をしています」
「…うす」
コンバースのオールスターをつっこんで
靴箱の扉を勢いよく閉めると、紺野が一瞬
びくついた。
「あ、ごめん。これ曲がってるんだ。こうやって閉めないと」
「うん。あ…」
「…何?」
「昨日の教科書の…」
「ああ」
「また告っちゃいました…もう、言いたいだけ?みたいな!あははは!」
「は…おまえ、軽っ!」
「軽い?うん、超ライト!」
後ろから階段を昇る紺野の足音が聞こえた。
…足取りが、軽い。
「あ、小野塚!ヤマセンが探してたよ。数学準備室来いって」
「おう、サンキュ。何だろ…」
すれ違った、クラスの友達が言った。
ヤマセン、とは担任の山田先生のことで
生徒とは、やたらと先生の名前を略したがる
ものだ。
「失礼しまーす」
「小野塚!こっちこっち!」
あと10分で予鈴鳴るんだけどな。
数学準備室に入るとヤマセンと見たことのない
若い男の人がソファに座って手招きしていた。
「あ。こいつ小野塚。うちの理数科で、数学はトップ」
ヤマセンが僕をそんな風に紹介した。
数学『は』、ね。
化学もトップあたりだけどな。
「初めまして。川辺といいます。K大大学院数理科学領域で微分方程式の研究をしています」
