
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「わ、すごい!捕まえた!」
「うん」
「逃がす?」
「…うん」
丸くした手を再び川の中に沈めると、オイカワは
何もなかったかのように泳ぎだした。
何匹かの仲間と一緒に、水の中を自由に泳ぎ、
そして今僕が捕まえていたのはどれなのかもう
わからなかった。
「流星?」
「ん?」
「ぼーっとしてる」
「いや、どこまでいくのかなーって…」
水面が真夏の太陽を反射してまぶしい。
目を開けていられなくて、空を見上げた。
空にはこれでもかと高く積乱雲が浮かんでいる。
自分の気持ちを手離してしまったら、
もう二度とみつけられないのだろうか。
そして、どこまでも流されていくのだろうか。
僕は、どんな感情でのぞみを大切に思って
きたのだろうか。
頭の中の疑問符は増える一方で、ひとつも
解決しない。
「流れ着くところが、行かなくちゃいけない場所なんだよ…きっと」
のぞみは小さなあの魚のことを言っている。
だけど、僕に言っているような気がして
ならなかった。
「あのオイカワ、もう仲間に会えねーな…」
「そうかな?あの子たちにとっては、この川もそう広くないのかも」
「ん?どういう意味?」
「あの魚にとって、川が広いなんていうのは人間が勝手に思ってることかも…なんてね。流星の受け売り。蝉のはなし」
「ああ、あの話…」
あと一週間の命と知りながら、懸命に地上に
這い出て、苦しみもがきながら羽化をする蝉。
子孫を残すためだけに、命の最期にこの世界に
あらわれる。
のぞみは、それを残酷な話だと言った。
まだ、僕らが小学生の頃の話だ。
覚えてたのか。
「あがる?」
「うん」
先に川縁に上がった僕は、のぞみに手を
差し出した。その手につかまって、
のぞみはキラキラした水を引き連れて
足を上げた。
のぞみは、どんな大人になるんだろう。
この先、違う恋をするのだろうか。
「うん」
「逃がす?」
「…うん」
丸くした手を再び川の中に沈めると、オイカワは
何もなかったかのように泳ぎだした。
何匹かの仲間と一緒に、水の中を自由に泳ぎ、
そして今僕が捕まえていたのはどれなのかもう
わからなかった。
「流星?」
「ん?」
「ぼーっとしてる」
「いや、どこまでいくのかなーって…」
水面が真夏の太陽を反射してまぶしい。
目を開けていられなくて、空を見上げた。
空にはこれでもかと高く積乱雲が浮かんでいる。
自分の気持ちを手離してしまったら、
もう二度とみつけられないのだろうか。
そして、どこまでも流されていくのだろうか。
僕は、どんな感情でのぞみを大切に思って
きたのだろうか。
頭の中の疑問符は増える一方で、ひとつも
解決しない。
「流れ着くところが、行かなくちゃいけない場所なんだよ…きっと」
のぞみは小さなあの魚のことを言っている。
だけど、僕に言っているような気がして
ならなかった。
「あのオイカワ、もう仲間に会えねーな…」
「そうかな?あの子たちにとっては、この川もそう広くないのかも」
「ん?どういう意味?」
「あの魚にとって、川が広いなんていうのは人間が勝手に思ってることかも…なんてね。流星の受け売り。蝉のはなし」
「ああ、あの話…」
あと一週間の命と知りながら、懸命に地上に
這い出て、苦しみもがきながら羽化をする蝉。
子孫を残すためだけに、命の最期にこの世界に
あらわれる。
のぞみは、それを残酷な話だと言った。
まだ、僕らが小学生の頃の話だ。
覚えてたのか。
「あがる?」
「うん」
先に川縁に上がった僕は、のぞみに手を
差し出した。その手につかまって、
のぞみはキラキラした水を引き連れて
足を上げた。
のぞみは、どんな大人になるんだろう。
この先、違う恋をするのだろうか。
