
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「おまえさー、本当頭いいくせにバカだよな」
「は?前もそれ、言われたよな」
いつもの公園で、要とふたりコーラを
飲みながらしゃべっていた。
のぞみは委員会、真緒は別の友達とカラオケに
行ったらしい。
「紺野ってさ、そういうの計算ずくなんだよ。サバサバしてるフリして、心んなかドロッドロだからな。痛い目に遭うのはおまえだからな」
「…近い。近いって、要」
要は鼻先が僕に触れそうなほど近づいて
言った。
そんなに近づかなくても聞こえるって。
「そんな悪いやつには思えないんだよな。ほら理数科って女子が少ないから、もう男女一緒くたになってるっていうか…」
「で、教科書は無事返ってきたのか?」
「すぐに返しにきたよ」
「意味深な手紙とか入ってなかっただろうな?」
「ないよ、んなもん」
僕は数Ⅲの薄い教科書を逆さにして、
ヒラヒラしてみせた。
すると、何か紙切れが舞い落ちた。
「ほら、ビンゴ」
僕は授業中に気づかなかった手紙に驚いた。
正確には手紙ではなくて、要に。
「で、何て書いてある?」
「…いや、いい」
「何がだよ」
要が紙切れを取り上げた。
「…んだよ、これ」
『教科書ありがとう。やっぱりまだ、小野塚くんが好きです』
僕はあわてて要から手紙を取り返した。
僕以外が見るなんて、紺野に失礼だ。
「…帰るよ」
「ちょ、流星!流星って!」
「何もないって。おれ、のぞみしかいないし」
それは事実であり本音だ。
いまさら紺野が何を言ってきても変わらない。
「もう、間違えるなよ?」
「わかってる。じゃあな」
僕は自転車に乗って、もうほとんど
散ってしまった桜の下を走り抜けた。
「は?前もそれ、言われたよな」
いつもの公園で、要とふたりコーラを
飲みながらしゃべっていた。
のぞみは委員会、真緒は別の友達とカラオケに
行ったらしい。
「紺野ってさ、そういうの計算ずくなんだよ。サバサバしてるフリして、心んなかドロッドロだからな。痛い目に遭うのはおまえだからな」
「…近い。近いって、要」
要は鼻先が僕に触れそうなほど近づいて
言った。
そんなに近づかなくても聞こえるって。
「そんな悪いやつには思えないんだよな。ほら理数科って女子が少ないから、もう男女一緒くたになってるっていうか…」
「で、教科書は無事返ってきたのか?」
「すぐに返しにきたよ」
「意味深な手紙とか入ってなかっただろうな?」
「ないよ、んなもん」
僕は数Ⅲの薄い教科書を逆さにして、
ヒラヒラしてみせた。
すると、何か紙切れが舞い落ちた。
「ほら、ビンゴ」
僕は授業中に気づかなかった手紙に驚いた。
正確には手紙ではなくて、要に。
「で、何て書いてある?」
「…いや、いい」
「何がだよ」
要が紙切れを取り上げた。
「…んだよ、これ」
『教科書ありがとう。やっぱりまだ、小野塚くんが好きです』
僕はあわてて要から手紙を取り返した。
僕以外が見るなんて、紺野に失礼だ。
「…帰るよ」
「ちょ、流星!流星って!」
「何もないって。おれ、のぞみしかいないし」
それは事実であり本音だ。
いまさら紺野が何を言ってきても変わらない。
「もう、間違えるなよ?」
「わかってる。じゃあな」
僕は自転車に乗って、もうほとんど
散ってしまった桜の下を走り抜けた。
