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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

のぞみはかばんの中から、何が入っているのか
前から聞きたかった、ペンケースを出した。
…ウサギのかぶりものしたキティの親戚…!まだ持ってたか!

「あ、流星も。ペンケース出して」

僕のかばんを開けて、のぞみはペンケースを
探していた。ノート1冊しか持ってないって
本当なんだ、とかプリントぐちゃぐちゃだよ
とか言いながらペンケースを探す。

「あ。おれ、ペンケースって持ってないんだ。その横のポケットに入ってる」
「え!あ、そうなの?え、こんだけ?!」
「のぞみが多すぎるんだよ」

僕はシャーペン1本と三色ボールペン1本と
消しゴムしか持っていなかった。
のぞみのペンケースには、カラーペンや
頭に何かのキャラクターがついたシャーペンや
押すと花が開いてその中から能天気な人形が
出るボールペンやら、不可解なものが
これでもかと言うほど入っていた。

「なんだ、これ…のぞみにそっくり」
「ひどい!ていうか、流星のシャーペン1本しかない。これしかないの?」
「うん」
「じゃあこの、一番気に入ってるメロディちゃんと交換ね」
「これ…おれ、明日からこれで授業受けるの?」
「そう!私、流星のシャーペン使ったらいい点取れそう!」

満足げなのぞみに、僕は何も言えなかった。
いや、結構うれしかった。のぞみが僕のものを
持ちたがったことが。
そして僕は、卒業してもずっとこの
メロディちゃんのシャーペンを使っていた。
メロディちゃんの顔はハゲて、何なのか
わからなくなっても、使っていた。
のぞみは知っていただろうか。
不思議なことに、これで受けた試験やテストが
全部いい点数が取れたのは、僕のほうだった。

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