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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「…な?」
「わからないって…流星、ちゃんと言ってよ」

のぞみは、少しだけ照れながら僕から視線を
そらせた。

「いや…何もない」
「へんなの」

日が傾き始めて、少し風が冷たくなってきた。
のぞみは僕からカーディガンを取り返して、
羽織ろうとした。

「待って」

僕は、そのカーディガンをもう少し
持っていたくて奪い返した。
代わりに自分のかばんから紺色の
Vネックセーターを出してのぞみに渡した。

「ん」
「何?もう」
「…のぞみの匂い」
「変態…」
「そう。知らなかった?」

のぞみは僕のセーターを頭からかぶって、
長い袖をブラブラさせていた。
やめろ、かわいすぎる!

「あ。流星知ってる?いま女子の間で、彼氏のものを身につけるのが流行ってるんだよ」
「へー」
「このセーター、貸して?私のカーディガン持ってていいから」
「ちょ、こんなのおれ、着られねーだろ」
「だめ、もう決まったから」
「こんなの持ってるのがバレたら、何言われるかわかんねーよ」
「見せなかったらいいじゃん」

のぞみは、まだ何か僕のものを身につけようと
狙っているようだった。

「時計は?」
「だめ」
「お願い!3日間だけ」
「のぞみの腕時計なんか、細すぎて巻けないだろ」
「ポケットに入れといたら?」
「時計の意味がない」
「…じゃあ、シャーペンは?」
「ん、それならいいけど」

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