
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
僕は、高校生になってやっとこの人がどんな
医師なのか理解できるようになった。
十河正孝。
6年前、のぞみのお母さんの主治医だった。僕に、一筋の光をあたえてくれた大人だ。
十河先生は、学生向けに自身の専門分野である
再生医療を分かりやすく書いた本を
出版していた。
医療の書籍だけでなく、もっと小さい子ども
向けの『医師とは何ぞや』的な本も書いていた。
僕はそれらを片っ端から読んだ。
おこがましくも全部、僕に宛てたメッセージの
ような気がした。
その時、担任が教室に入ってきて出席番号順に
座るように言い、僕は松井と対角線上に席が
決まった。
始業式が終わり、早速実力テストの
スケジュールが貼り出された。
それをメモして、僕は足早に教室を出た。
渡り廊下を越えると、すぐにのぞみのC組だ。
「のぞみ」
「あ、流星!…うん、じゃあね」
僕に気づくと、話していた数人の女の子に
断ってこっちに走ってきた。
「いこ。桜、ずっと浜の方まで満開だって」
「じゃあ図書館寄っていい?本返すだけ」
「うん」
のぞみと並んで階段を降りる。
あかるすぎて、一瞬目がくらむ。
春の光は、特別だ。
全部をチャラにして新しく始められるような
気がする。
「っしゃ、走ろ!」
「え、待って、流星!」
僕は階段を一段飛ばしで、駐輪場まで走った。
医師なのか理解できるようになった。
十河正孝。
6年前、のぞみのお母さんの主治医だった。僕に、一筋の光をあたえてくれた大人だ。
十河先生は、学生向けに自身の専門分野である
再生医療を分かりやすく書いた本を
出版していた。
医療の書籍だけでなく、もっと小さい子ども
向けの『医師とは何ぞや』的な本も書いていた。
僕はそれらを片っ端から読んだ。
おこがましくも全部、僕に宛てたメッセージの
ような気がした。
その時、担任が教室に入ってきて出席番号順に
座るように言い、僕は松井と対角線上に席が
決まった。
始業式が終わり、早速実力テストの
スケジュールが貼り出された。
それをメモして、僕は足早に教室を出た。
渡り廊下を越えると、すぐにのぞみのC組だ。
「のぞみ」
「あ、流星!…うん、じゃあね」
僕に気づくと、話していた数人の女の子に
断ってこっちに走ってきた。
「いこ。桜、ずっと浜の方まで満開だって」
「じゃあ図書館寄っていい?本返すだけ」
「うん」
のぞみと並んで階段を降りる。
あかるすぎて、一瞬目がくらむ。
春の光は、特別だ。
全部をチャラにして新しく始められるような
気がする。
「っしゃ、走ろ!」
「え、待って、流星!」
僕は階段を一段飛ばしで、駐輪場まで走った。
