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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

がちゃんと自転車を鳴らして、
取り合えず電車乗ろうぜ、
あ、昼飯どうするー?と言いながら
要と並んで校門を出る。
駅に向かって坂道を降りた。

「したかどうかは聞かねーけどさ、…めちゃくちゃやわらかいだろ?」
「あ…うん。そうだな」

思わず僕は、数日前のことを思い返した。

「ほら、やっぱり、したんだ」
「汚ねー!誘導尋問かよ!」

券売機で切符を買って、改札をくぐる。要はいつだって僕の心配をしてくれている。
こうやって、僕とのぞみのことを
根掘り葉掘り聞いてくるのも、
紺野とのことを気にしてくれているからで
要は本当にいいやつなんだ。
僕はいつの間にか、病気のことが心の奥に
追いやられていることに気づく。
親友と恋愛話をしている僕がいる。

「けど最後までは、いってないからな」
「はあ?!そんなこと、できんのかよ?!」
「…仕方ねーだろ、持ってなかったし」
「じゃあやるよ」
「いらねーって」
「ほら、どれがいい?血液型占いが書いてある。流星はO型だろ、じゃ、これな」
「あー!もうっ」

風が吹きすさぶ駅のホームで、
避妊具を押し付ける要と、仕方なく
それを受けとる僕は、はたから見るとバカな
高校生だっただろう。
だけど、後になって思い出すのは、そんな
くだらないことばかりなんだ。
くだらない毎日の中で、僕らは悩み、迷い、
答えを探しながら歩いていた。
見つかることもあれば、途中で見失うことも
あった。
誰かを傷付けたり、傷付けられたりして
人の気持ちを理解していった。
みんなこんなふうにして、毎日を過ごして
いるのだろうか。
こんなに、毎日輝いているのだろうか。
僕はしあわせだった。
夢は叶うと思っていたし、
病気は再発しないと信じていた。

「のぞみの欲しいものって、全くわからないんだよな」
「うーん、確かにのぞみの趣味ってわからないな。なんだっけ、あのいつも持ってる…ピンクのウサギのかぶりものした 、キティちゃんの親戚みたいなやつ」
「あー、メロディちゃん?」
「そうそう!さすがにあれをプレゼントするのは、ないよな」
「ないない。ていうか、それ小学校のときの話じゃん。さすがにもう持ってない」

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