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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

来年のクラス分けのための学力テストが
終わった。
これでやっと冬休みだ。

「流星ー帰ろうぜー」

教室のうしろから要が呼んだ。
今日は真緒がのぞみと買い物に行くとかで
要は暇らしい。

「何する?寒いしカラオケでも行く?」
「おれはおまえと違って、することいっぱいあるんだよ」
「え、じゃあ…どうする?」
「おまえ、真緒にクリスマスプレゼントどうすんの?」

階段を降りながら、要に聞いた。
悔しいけれど、要は恋愛において僕より
先輩だ。
今までさんざんクリスマスや誕生日を
一緒に過ごしてきたのに、
ちゃんとしたものを贈ったことはなかった。
去年まではただの幼なじみだったし、
そんなことを考えることもなかったからだ。
ここは要の意見でも参考になるに違いない。

「真緒が、なんとなーく欲しそうな靴の話をしてたから…それだな」

要はちょうど真裏の靴箱で、クラスメイトに
じゃーな、と声を掛けながら答えた。

「なあ、『なんとなーく欲しい靴』ってどうやったら話題に出るんだ?」

大きめの声で僕は向こう側にいる要に
聞いた。
靴箱に上履きを突っ込んで、スチールの
扉を強めに閉めた。
少しへこんでいて閉まりにくい。

「真緒が雑誌読んでる時に、『こういうの似合うかな?』って言ってたから」

駐輪場に向かって歩きながら、コンバースの
ワンスターのかかとを引っ張って要は普通に
答える。
一緒に雑誌を読む環境にならない場合は
どうすればいいんだよ。

「あ、もしかして流星くん、プレゼント買いに行くんっすか?付き合いましょうか?」

要は、僕の前に回り込んでニヤニヤしながら
言った。

「仕方ないからアドバイスさせてやるよ」
「んだよ、上から目線」

のぞみの誕生日は、実は二日前だった。だけど試験前で学校でしか会えず、
おめでとうと言っただけだった。
クリスマスこそは何かプレゼントしたい。

「どっか出掛けんの?クリスマス」
「…六甲山から夜景」
「ほう。なかなかだね」
「寒いだろ」
「『おれが温めてあげるよ』だな」

自転車の鍵を探しながら、要がへんな想像を
しているのが手に取るようにわかる。

「おまえとは違うんだよ」
「もしかして、した?」
「してねーよ」
「なんだ」

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