
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
並んで草の上に座ると、二人の間に
微妙な距離があった。
僕が先に座ったから、この距離を決めたのは
のぞみの方だ。
「…私ね…苦しい」
「え?」
突然のぞみが言った言葉に僕は思わず、
草をちぎっていた手を止めた。
「なんで?」
「わかんない…」
のぞみは、抱えた膝にあごを乗せて、
僕と反対側を向いた。
「いつから?」
「…キス…してから」
「そっか…」
僕は立ち上がって、
のぞみがどんな顔をしているか見ないように
した。
そして、目についた石ころを拾って
川面に向かって投げた。
「おれも、苦しい」
僕は正直に言おうとした。
隠したり遠回しにすれば余計に伝わらないと
思った。
「のぞみと…したい。えっと…キスのその先」
「…流星」
「けど、違うんだ。のぞみ。まわりに流されるのは違う」
「流星…」
再びのぞみの隣に座り、今度は肩と肩が
触れるくらい、距離を縮めた。
「おれ、そんなことで頭がいっぱいになるようなやつじゃないよ…って言ったら少し違うかな。そりゃあ、一応男だし興味はある。いや、かなりある。でものぞみが不安がってるのに、自分の欲望を押し通すような男にはなりたくない」
「うん…」
「…キスは…してもいい?」
地面を見つめて動かないのぞみを、さらに
のぞきこんだ。
「うん…したい」
僕の、16歳の誠実さを精一杯見せたつもり
だった。
のぞみの小さな頭に右手をまわして、
その冷たい髪を撫でながら、
やわらかな唇を優しく吸った。
きっと、のぞみも同じことで苦しかったんだと
思う。
僕らは、全てのことにおいて手探りだった。
まわりに惑わされたり、時には自分のこと
さえも疑わしく思ったり。きっと大人になればこんなことで悩んでいたことすら、
笑い話になるだろう。
でも、僕にはそんな日がくるのだろうか。
日に日にそんな考えが、僕の中で
ふくらんでいった。
微妙な距離があった。
僕が先に座ったから、この距離を決めたのは
のぞみの方だ。
「…私ね…苦しい」
「え?」
突然のぞみが言った言葉に僕は思わず、
草をちぎっていた手を止めた。
「なんで?」
「わかんない…」
のぞみは、抱えた膝にあごを乗せて、
僕と反対側を向いた。
「いつから?」
「…キス…してから」
「そっか…」
僕は立ち上がって、
のぞみがどんな顔をしているか見ないように
した。
そして、目についた石ころを拾って
川面に向かって投げた。
「おれも、苦しい」
僕は正直に言おうとした。
隠したり遠回しにすれば余計に伝わらないと
思った。
「のぞみと…したい。えっと…キスのその先」
「…流星」
「けど、違うんだ。のぞみ。まわりに流されるのは違う」
「流星…」
再びのぞみの隣に座り、今度は肩と肩が
触れるくらい、距離を縮めた。
「おれ、そんなことで頭がいっぱいになるようなやつじゃないよ…って言ったら少し違うかな。そりゃあ、一応男だし興味はある。いや、かなりある。でものぞみが不安がってるのに、自分の欲望を押し通すような男にはなりたくない」
「うん…」
「…キスは…してもいい?」
地面を見つめて動かないのぞみを、さらに
のぞきこんだ。
「うん…したい」
僕の、16歳の誠実さを精一杯見せたつもり
だった。
のぞみの小さな頭に右手をまわして、
その冷たい髪を撫でながら、
やわらかな唇を優しく吸った。
きっと、のぞみも同じことで苦しかったんだと
思う。
僕らは、全てのことにおいて手探りだった。
まわりに惑わされたり、時には自分のこと
さえも疑わしく思ったり。きっと大人になればこんなことで悩んでいたことすら、
笑い話になるだろう。
でも、僕にはそんな日がくるのだろうか。
日に日にそんな考えが、僕の中で
ふくらんでいった。
