20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
僕の自転車の荷台に座って、のぞみはまた
グラウンドの陸上部の練習を見ていた。
「のぞみ」
「あ。流星。ごめんね、先に出てきちゃった」
「もう帰る?」
「うーん…ねえ、あの練習、流星もしてたよね。中学の頃」
この間もそんなことを言ってたな。
「あれはスタートブロックを使ってスタートダッシュの練習してるんだよ」
荷台から降りたのぞみは、フェンスに近づいて
まだ練習を見ている。
「走ってる流星が…好きだった。もう、走らないの?」
ひとりごとのように、のぞみはつぶやいた。
「もう2年も走ってないからな。ダメだな今は」
病気のことがあった。だけど、もうあんな風に
記録のために走ったり練習はしたくない。
僕は自転車を駐輪場から出して、のぞみに
後ろに乗るように言った。
のぞみは僕の背中に顔を埋めて何か言った。
「ん?」
「…なんでもない」
のぞみを家まで送る道すがら、
何度か話しかけたが曖昧な返事をするばかり
だった。
「…着いた。また明日な」
「うん…」
「じゃあな。おれ行くから」
「ん…」
「なんだよ。はっきり言えよ」
思わず強い口調になった。
図書館で勉強している時まではいつもの
のぞみだったのに、何があったのか
わからなくて僕はイラついていた。
「…帰らないで…」
な、何て言った!?落ち着け、おれ!
「帰るよ。帰って勉強するから」
「いや」
「何があったのか言ってみ」
「一緒にいたいの。…それだけ」
僕はさっきの要の言葉が頭をよぎった。
ダメだ、それはダメだ。
「ん…じゃあもうちょっとだけな」
僕らは、のぞみの家から近い川原のほうに
向かった。
毎年夏に花火を見る場所だ。
西に傾きかけた太陽が水面に反射して
まぶしい。
風は穏やかで真冬にしては暖かい1日だった。
でもさすがに、この時間からは急激に
冷えてくるだろう。
「寒くなるから、ちょっとだけな」
「うん…」
グラウンドの陸上部の練習を見ていた。
「のぞみ」
「あ。流星。ごめんね、先に出てきちゃった」
「もう帰る?」
「うーん…ねえ、あの練習、流星もしてたよね。中学の頃」
この間もそんなことを言ってたな。
「あれはスタートブロックを使ってスタートダッシュの練習してるんだよ」
荷台から降りたのぞみは、フェンスに近づいて
まだ練習を見ている。
「走ってる流星が…好きだった。もう、走らないの?」
ひとりごとのように、のぞみはつぶやいた。
「もう2年も走ってないからな。ダメだな今は」
病気のことがあった。だけど、もうあんな風に
記録のために走ったり練習はしたくない。
僕は自転車を駐輪場から出して、のぞみに
後ろに乗るように言った。
のぞみは僕の背中に顔を埋めて何か言った。
「ん?」
「…なんでもない」
のぞみを家まで送る道すがら、
何度か話しかけたが曖昧な返事をするばかり
だった。
「…着いた。また明日な」
「うん…」
「じゃあな。おれ行くから」
「ん…」
「なんだよ。はっきり言えよ」
思わず強い口調になった。
図書館で勉強している時まではいつもの
のぞみだったのに、何があったのか
わからなくて僕はイラついていた。
「…帰らないで…」
な、何て言った!?落ち着け、おれ!
「帰るよ。帰って勉強するから」
「いや」
「何があったのか言ってみ」
「一緒にいたいの。…それだけ」
僕はさっきの要の言葉が頭をよぎった。
ダメだ、それはダメだ。
「ん…じゃあもうちょっとだけな」
僕らは、のぞみの家から近い川原のほうに
向かった。
毎年夏に花火を見る場所だ。
西に傾きかけた太陽が水面に反射して
まぶしい。
風は穏やかで真冬にしては暖かい1日だった。
でもさすがに、この時間からは急激に
冷えてくるだろう。
「寒くなるから、ちょっとだけな」
「うん…」
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