
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「手加減しないけど、いいか?」
「いいよ。本気出してよ」
「ハンデいるなら今のうちだぞ」
「いらない」
「よし、じゃあやろう」
約束していた公園に要が来るまで、
気分を落ち着けようと走っていたら、
遊んでいた小学生に誘われて
やけくそになって、本気で走った。
今日の体育は短距離走のタイムをとったが、
のぞみが教室から見てるかも、
などという下心が起爆剤になって、
自己新のタイムが出た。
クラスのやつらは本気でびっくりしていたけど
のぞみが見ていたはずないか。
そういや、県大会で優勝したときも
のぞみが見に来てたんだよな。
なんか調子こいて記録を出したけど、
あれだってのぞみは僕が見に来いと誘ったから
来ただけのことだったんだ。
んだよ。かっこ悪。
また一緒に走ろう、と言い残して
小学生は帰っていった。
制服が汚れたってどうでもよくて、
僕は再びグラウンドに寝転がって空を
見上げた。
全部、空になる…
ひさしぶりに、そんなことを思った。
そういや、見上げてなかった。
中2の秋の終わり。
自分の病気がわかって、
父さんの会社が潰れて、
必死で前に進むことしか考えてなかった。
下を向いてちゃダメだ、前に進め…
そう思っていたから、空まで見上げる余裕が
なかった。
当たり前だけど、同じだ。
空はいつも、同じだ。
あの時本当は、たまらなく怖かった。
季節が冬に向かうのか、夏に向かうのかも
わからなかった。
怖かったのは、走れなくなったことではない。
「いいよ。本気出してよ」
「ハンデいるなら今のうちだぞ」
「いらない」
「よし、じゃあやろう」
約束していた公園に要が来るまで、
気分を落ち着けようと走っていたら、
遊んでいた小学生に誘われて
やけくそになって、本気で走った。
今日の体育は短距離走のタイムをとったが、
のぞみが教室から見てるかも、
などという下心が起爆剤になって、
自己新のタイムが出た。
クラスのやつらは本気でびっくりしていたけど
のぞみが見ていたはずないか。
そういや、県大会で優勝したときも
のぞみが見に来てたんだよな。
なんか調子こいて記録を出したけど、
あれだってのぞみは僕が見に来いと誘ったから
来ただけのことだったんだ。
んだよ。かっこ悪。
また一緒に走ろう、と言い残して
小学生は帰っていった。
制服が汚れたってどうでもよくて、
僕は再びグラウンドに寝転がって空を
見上げた。
全部、空になる…
ひさしぶりに、そんなことを思った。
そういや、見上げてなかった。
中2の秋の終わり。
自分の病気がわかって、
父さんの会社が潰れて、
必死で前に進むことしか考えてなかった。
下を向いてちゃダメだ、前に進め…
そう思っていたから、空まで見上げる余裕が
なかった。
当たり前だけど、同じだ。
空はいつも、同じだ。
あの時本当は、たまらなく怖かった。
季節が冬に向かうのか、夏に向かうのかも
わからなかった。
怖かったのは、走れなくなったことではない。
