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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「ていうか、そんな好きなんだ、のぞみのこと」
「…うん。けど、たぶん向こうはそんな風に見てない」
「とりあえず、女と付き合いたい感じ?」
「いや…そうじゃなくてさ…おれ、何も経験ないし…」
「は?」

これは僕の勝手極まりない考えなのだが、
もし。もし、のぞみと付き合ったとして、だ。
その、彼氏と彼女がする色んなことを
経験するにあたって、経験がないがゆえに
のぞみをガッカリさせることになったら…

「おまえ、頭いいくせにバカだな」

要が冷ややかな視線で、
確実に僕を見下すように言った。

「だからって紺野で練習すんのかよ?」
「違うって、そういう意味じゃない」
「そういう意味だろーが」
「あーっ!もういい。どうでもいい」

正直に言うと、のぞみも同じ気持ちで
いてくれると思っていた。うぬぼれていた。
僕はいつも、のぞみの味方だったし
のぞみのヒーローになろうとしてきた。
それはちゃんと伝わっていると勝手に
思い込んでいたのだ。

「暑いんだからさー、もうじめじめするの、止めようぜ。夏期講習休んだんならさカラオケでも行くか。おれがラブソングを熱唱してやるよ」
「…ごめん、そんな気力ねーわ。帰る」

僕は頭から布団でもかぶって、
冬眠でもしたい気分だった。
そしてそれから夏休みが終わるまで、
のぞみに連絡をすることができないでいた。

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