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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

その時、のぞみが走ってきた。
なぜか慌てた様子でおでこを全開にして、
僕を見上げるとアイスクリーム屋に行きたいと
言う。

「え?あ、うん。行こう。…じゃあな、紺野」

紺野は、何もなかったかのように参考書に
目を向けたまま手を振った。
少し、良心が痛んだけれどこうするしか
なかった。
いつもの店は夏休みのせいか学生が多かった。
のぞみの注文したバニラとストロベリーの
カップと、自分のコーラを手に
確保していた椅子を足で引くと、
微妙な角度だったのか、膝に痛みが走った。
痛みが引くまでのわずかな時間も、
のぞみに気づかれたくなくて、
外に視線をやった。雨が降りそうだ。
のぞみは、僕の勉強のことだとか
どうでもいいことを聞いてくる。
僕を本屋から連れ出した真意を
測りかねていると、横顔にのぞみの視線を
感じた。
最近ののぞみは、僕の顔ばかり見ている。
…だから、そんなに見られたら
冷静でいるのにも限界があるというか…
その状況を打破するために、僕はのぞみに
聞いてみたがすぐに後悔することを知る。

「おれのことどう思う?」

向かいでアイスクリームをすくうのぞみに
聞いてみた。
のぞみは子どもの頃からアイスクリームが
好きで、多分真冬でも食べている。
僕は甘くて冷たいものは好きではない。
何となく、矛盾している気がしてならない。


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