
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
「おれ、参考書のコーナー見てるから。のぞみは好きな本見てこいよ。三時から夏期講習だから…二時半にここな」
「あ、私時計持ってないんだ」
高校生になって初めての夏休み。
僕はバイトをしながら塾の夏期講習に
通っている。
そんな合間を縫ってのぞみと会っていた。
最近は膝の調子もよく、食欲も戻ってきて
自分の病気を忘れそうになる。
今のうちに、バイトも勉強もしておきたくて
つい無理をしてしまうが、とにかく
充実した毎日だ。
「じゃあこれ持ってて。おれは大体わかるから」
のぞみの細い手首に自分の腕時計をぎゅっ
巻いて、参考書のコーナーに向かった。
夏休みに入って、要と真緒は二人で
出かけることが多くなった。
必然的に僕はのぞみと会う。
別にそうしなければならない理由は
ないけれど、やっぱりのぞみと一緒にいたい。
何だかんだ言って、僕はのぞみを女の子として
意識しているからだ。
向こうはどうか、わからないけど。
「小野塚くん!」
振り返ると、制服の倍の長さはあろうかという
スカートをはいた紺野がいた。
こっちは夏期講習のクラスが同じで、
ほぼ毎日顔を合わせている。
自習室でも目ざとく僕を見つけては、
隣の席に座りにくる。
だけど、何ていうか、学校での紺野とは
少し違う。
僕をうまく使っているというか、
わからないところを聞いてきたり、
人気のある講座の場所とりをさせられたり。
とにかく紺野も医学部を目指しているらしい。
「ねえ、小野塚くん」
「…ん?」
小声で呼び掛けられて、紺野の方を向いた。
「私、小野塚くんの彼女になりたい」
僕は耳を疑う。
紺野は、普通の顔をして笑っている。
しかも、手には過去問を持ったまま。
だけど僕は驚かない。
なぜなら、紺野の告白はこれが初めてでは
ないからだ。
夏休み前から僕に気のある態度は
日常茶飯事だったし、最近でも何度か
言われている。
「さっきのぞみちゃんに会ったよ。そしたら急に、小野塚くんに言いたくなったの。ねえ、付き合って?私、ずっと小野塚くんが好きだったんだ。…って何度も言ってるけど」
「あ、私時計持ってないんだ」
高校生になって初めての夏休み。
僕はバイトをしながら塾の夏期講習に
通っている。
そんな合間を縫ってのぞみと会っていた。
最近は膝の調子もよく、食欲も戻ってきて
自分の病気を忘れそうになる。
今のうちに、バイトも勉強もしておきたくて
つい無理をしてしまうが、とにかく
充実した毎日だ。
「じゃあこれ持ってて。おれは大体わかるから」
のぞみの細い手首に自分の腕時計をぎゅっ
巻いて、参考書のコーナーに向かった。
夏休みに入って、要と真緒は二人で
出かけることが多くなった。
必然的に僕はのぞみと会う。
別にそうしなければならない理由は
ないけれど、やっぱりのぞみと一緒にいたい。
何だかんだ言って、僕はのぞみを女の子として
意識しているからだ。
向こうはどうか、わからないけど。
「小野塚くん!」
振り返ると、制服の倍の長さはあろうかという
スカートをはいた紺野がいた。
こっちは夏期講習のクラスが同じで、
ほぼ毎日顔を合わせている。
自習室でも目ざとく僕を見つけては、
隣の席に座りにくる。
だけど、何ていうか、学校での紺野とは
少し違う。
僕をうまく使っているというか、
わからないところを聞いてきたり、
人気のある講座の場所とりをさせられたり。
とにかく紺野も医学部を目指しているらしい。
「ねえ、小野塚くん」
「…ん?」
小声で呼び掛けられて、紺野の方を向いた。
「私、小野塚くんの彼女になりたい」
僕は耳を疑う。
紺野は、普通の顔をして笑っている。
しかも、手には過去問を持ったまま。
だけど僕は驚かない。
なぜなら、紺野の告白はこれが初めてでは
ないからだ。
夏休み前から僕に気のある態度は
日常茶飯事だったし、最近でも何度か
言われている。
「さっきのぞみちゃんに会ったよ。そしたら急に、小野塚くんに言いたくなったの。ねえ、付き合って?私、ずっと小野塚くんが好きだったんだ。…って何度も言ってるけど」
