
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
要と自転車で帰る放課後。
ふとしたことから、紺野の話題になった。
それを要は一言でまとめてしまった。
「いーんじゃね?理数科のアイドル、一人占めしちゃうのも」
「何言ってんだよ。おれは遊ぶために高校に入ったんじゃない」
「…だよな。あんなに好きだった陸上も辞めてさ。勉強ばっかなんて。やつれるほど勉強して、何になるんだよ」
要は半ばあきれた様子で自転車をこぎながら
言った。
要の髪が5月の風に揺れている。
確かに、高校に入ってまた背は伸びたけれど
体重は変わっていない。薬の副作用なのか、
食欲不振気味だ。
「おれ、そんなやつれた?」
「…結構な。のぞみは心配してない?」
「さあ…何も言わない」
「バイトとか、しなきゃなんねーの?」
「まあな…」
今年の夏休みは予備校の夏期講習に
行きたいと思っている。
でもそんな費用はうちにあるわけがなく、
バイトを始めた。
所詮公立高校、学校の勉強だけでは国立大の
医学部に合格できそうにない。
絶対に僕は医者になる。だから。
「…親父の会社が潰れなかったら、おれの人生変わってたかな…」
そうだ。それが本音だ。
「こればっかりはな…大人の都合に振り回されただけだからな。けどさ」
「ん?」
「おれは、流星のことカッコいいと思うよ。…言わないだけで、何かあんだろ?仲間にも話したくない何か。でも詮索はしないよ。おれは流星のことわかってるつもり。誰よりもな」
要は真面目に言った。
一番心配してくれているのは、要だ。
それには随分前から気づいていた。
「…ごめん、おれ、そっち系じゃない」
僕はそう言って全速力で自転車をこいだ。
「んだよ、人が本音で話してんのによ!待てって!おれもそっち系じゃねーって!」
すぐに要が立ちこぎで追いかけてくる。
通い初めてまだ1ヶ月ちょっとの道を、
幼なじみと二人で駆け抜ける。
かすかに膝に痛みが走ったが、それですら、
自分が生きている証のようでうれしかった。
風を切ることも、緑の匂いを身体いっぱいに
吸い込むことも、まだ、できる。
でもこんな当たり前の毎日を感じるたびに、
僕はたまらなく死を意識する。
そんなこと、絶対に誰にも言いたくない。
ふとしたことから、紺野の話題になった。
それを要は一言でまとめてしまった。
「いーんじゃね?理数科のアイドル、一人占めしちゃうのも」
「何言ってんだよ。おれは遊ぶために高校に入ったんじゃない」
「…だよな。あんなに好きだった陸上も辞めてさ。勉強ばっかなんて。やつれるほど勉強して、何になるんだよ」
要は半ばあきれた様子で自転車をこぎながら
言った。
要の髪が5月の風に揺れている。
確かに、高校に入ってまた背は伸びたけれど
体重は変わっていない。薬の副作用なのか、
食欲不振気味だ。
「おれ、そんなやつれた?」
「…結構な。のぞみは心配してない?」
「さあ…何も言わない」
「バイトとか、しなきゃなんねーの?」
「まあな…」
今年の夏休みは予備校の夏期講習に
行きたいと思っている。
でもそんな費用はうちにあるわけがなく、
バイトを始めた。
所詮公立高校、学校の勉強だけでは国立大の
医学部に合格できそうにない。
絶対に僕は医者になる。だから。
「…親父の会社が潰れなかったら、おれの人生変わってたかな…」
そうだ。それが本音だ。
「こればっかりはな…大人の都合に振り回されただけだからな。けどさ」
「ん?」
「おれは、流星のことカッコいいと思うよ。…言わないだけで、何かあんだろ?仲間にも話したくない何か。でも詮索はしないよ。おれは流星のことわかってるつもり。誰よりもな」
要は真面目に言った。
一番心配してくれているのは、要だ。
それには随分前から気づいていた。
「…ごめん、おれ、そっち系じゃない」
僕はそう言って全速力で自転車をこいだ。
「んだよ、人が本音で話してんのによ!待てって!おれもそっち系じゃねーって!」
すぐに要が立ちこぎで追いかけてくる。
通い初めてまだ1ヶ月ちょっとの道を、
幼なじみと二人で駆け抜ける。
かすかに膝に痛みが走ったが、それですら、
自分が生きている証のようでうれしかった。
風を切ることも、緑の匂いを身体いっぱいに
吸い込むことも、まだ、できる。
でもこんな当たり前の毎日を感じるたびに、
僕はたまらなく死を意識する。
そんなこと、絶対に誰にも言いたくない。
