
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
チラッと自分の席を見ると、隣で紺野が
手を振っていた。…はあ。苦手だ。
僕はそのまま、また意味もなくトイレに
行った。
理数数学とは、平たく言えば
ネーミングの問題で、実際普通の数学とさして
変わらない気がする。ただ、他の科とは
明らかに進度が違う。
理数科の授業は単純に面白かった。
さすがみんな難関をくぐり抜けてきた
だけあって、どの授業も張り合い甲斐がある。
同じ中学だった松井ですら、今月の
実力テストは一位ではなく、
僕はあいつが悔しがる姿を初めて見た。
出来るだけ、チャイムが鳴る寸前まで
席に戻らないでおこうと頑張っていたが、
10分の休憩時間はあまりに短く、僕は仕方なく
戻った。先生が、小テストするからと言って
問題を黒板に書き始めた。
「あの子、のぞみちゃんって言うんだ?普通科?」
「…そう」
「小野塚くんに合ってる」
「は?」
「かわいいな、ってこと」
何だか無茶苦茶バカにされた気がした。
なんだよ、その態度。
「おまえより、ずっとな」
僕は紺野の横顔に向かってつぶやいた。
紺野は聞こえていないフリをして、
問題を書き写している。
「解けたらー、今日は5月だからー、5番の小野塚。前出て、答え書いて」
はい、と答えて僕は証明の問題を解いていく。
理路整然と。スマートに。
チョークを置いて席に戻ると、机の上に
メモが置いてあった。
『今日放課後、予定がなければ参考書買うの付き合って! かおり』
僕は隣に聞こえるようにため息をつき、
ノートの端に返事を書いて紺野に見せると、
紺野は残念、と口を動かした。
この子のこういうところも苦手だ。
平気で男を誘うところや、
『女子といるより男子といる方がラクで
いい』とか、
『性格はサバサバしてる』とか
自分で言うようなところ。
無駄に相手を惑わせる、というか。
気持ちの持っていく方向に迷うんだよな。
「それ、おまえのことが好きなんだろ、完全に」
手を振っていた。…はあ。苦手だ。
僕はそのまま、また意味もなくトイレに
行った。
理数数学とは、平たく言えば
ネーミングの問題で、実際普通の数学とさして
変わらない気がする。ただ、他の科とは
明らかに進度が違う。
理数科の授業は単純に面白かった。
さすがみんな難関をくぐり抜けてきた
だけあって、どの授業も張り合い甲斐がある。
同じ中学だった松井ですら、今月の
実力テストは一位ではなく、
僕はあいつが悔しがる姿を初めて見た。
出来るだけ、チャイムが鳴る寸前まで
席に戻らないでおこうと頑張っていたが、
10分の休憩時間はあまりに短く、僕は仕方なく
戻った。先生が、小テストするからと言って
問題を黒板に書き始めた。
「あの子、のぞみちゃんって言うんだ?普通科?」
「…そう」
「小野塚くんに合ってる」
「は?」
「かわいいな、ってこと」
何だか無茶苦茶バカにされた気がした。
なんだよ、その態度。
「おまえより、ずっとな」
僕は紺野の横顔に向かってつぶやいた。
紺野は聞こえていないフリをして、
問題を書き写している。
「解けたらー、今日は5月だからー、5番の小野塚。前出て、答え書いて」
はい、と答えて僕は証明の問題を解いていく。
理路整然と。スマートに。
チョークを置いて席に戻ると、机の上に
メモが置いてあった。
『今日放課後、予定がなければ参考書買うの付き合って! かおり』
僕は隣に聞こえるようにため息をつき、
ノートの端に返事を書いて紺野に見せると、
紺野は残念、と口を動かした。
この子のこういうところも苦手だ。
平気で男を誘うところや、
『女子といるより男子といる方がラクで
いい』とか、
『性格はサバサバしてる』とか
自分で言うようなところ。
無駄に相手を惑わせる、というか。
気持ちの持っていく方向に迷うんだよな。
「それ、おまえのことが好きなんだろ、完全に」
