
20年 あなたと歩いた時間
第11章 手探りの日々
日が暮れかけた雨上がりの市営グラウンドは
ナイター照明が煌々と灯っていて、
少年野球チームが試合をしていた。
スコアボードは既にゼロで埋め尽くされ、
しばらく決着はつきそうにない。
僕はその隣、誰もいない、
かろうじて明かりの届くタータントラックで
ストレッチからドリルをいつものように丁寧に
する。たった十秒そこそこで
マックススピードに持っていくために、
これだけ時間をかける。
その面倒くささが好きだ。
リレーみたいなチームプレーや、
中距離もいいけど、潔く結果の出る短距離が
僕には向いている。
何本か走って休憩していると、いつの間にか
試合の終わった少年野球の中から、
人がこっちに向かってくるのが見えた。
「まだ走る?それなら、照明つけておくけど」
要くらいの年格好だ。
ユニフォームを着ているから、監督だろうか。
「あ、いや。もう帰ります。…ていうか、暗くても全然大丈夫なんで」
「そう?…あのさ、しばらく見てたんだ。君が走るの」
「はあ…」
こんな薄暗いトラックでひとり走ってたら
そりゃ怪しいもんな。
「記録とか出してたら、失礼な話なんだけど、すごくいい走りだね」
「…ありがとうございます」
タイムは悪くない。
だけど、本番に弱いタイプで
県大会に一度出たことがあるだけだ。
「才能だからな、スプリントは」
オッサン、野球じゃねえのかよ?
「君にそっくりなフォームで走るやつが昔いたんだ。ひさしぶりに思い出したよ」
僕は、へぇとか、はぁとか間抜けな返事しか
することができずに、ちょっと面倒くさいなと
思い始めていた。
「同級生でさ。何も勝てなかったんだ。そいつには。走っても勉強しても、恋愛も」
ほとんどひとりごとみたいに、そのオッサンは
話し続けた。
僕がクールダウンを終えて
ストレッチを始めても、まだ続いた。
途中あまり聞いていなかったが、
青春の思い出に自分が浸っていたいだけ
なんだろうと思い、そのままにしておいた。
ていうか、
どういう経緯で少年野球の監督やってんだ?
ナイター照明が煌々と灯っていて、
少年野球チームが試合をしていた。
スコアボードは既にゼロで埋め尽くされ、
しばらく決着はつきそうにない。
僕はその隣、誰もいない、
かろうじて明かりの届くタータントラックで
ストレッチからドリルをいつものように丁寧に
する。たった十秒そこそこで
マックススピードに持っていくために、
これだけ時間をかける。
その面倒くささが好きだ。
リレーみたいなチームプレーや、
中距離もいいけど、潔く結果の出る短距離が
僕には向いている。
何本か走って休憩していると、いつの間にか
試合の終わった少年野球の中から、
人がこっちに向かってくるのが見えた。
「まだ走る?それなら、照明つけておくけど」
要くらいの年格好だ。
ユニフォームを着ているから、監督だろうか。
「あ、いや。もう帰ります。…ていうか、暗くても全然大丈夫なんで」
「そう?…あのさ、しばらく見てたんだ。君が走るの」
「はあ…」
こんな薄暗いトラックでひとり走ってたら
そりゃ怪しいもんな。
「記録とか出してたら、失礼な話なんだけど、すごくいい走りだね」
「…ありがとうございます」
タイムは悪くない。
だけど、本番に弱いタイプで
県大会に一度出たことがあるだけだ。
「才能だからな、スプリントは」
オッサン、野球じゃねえのかよ?
「君にそっくりなフォームで走るやつが昔いたんだ。ひさしぶりに思い出したよ」
僕は、へぇとか、はぁとか間抜けな返事しか
することができずに、ちょっと面倒くさいなと
思い始めていた。
「同級生でさ。何も勝てなかったんだ。そいつには。走っても勉強しても、恋愛も」
ほとんどひとりごとみたいに、そのオッサンは
話し続けた。
僕がクールダウンを終えて
ストレッチを始めても、まだ続いた。
途中あまり聞いていなかったが、
青春の思い出に自分が浸っていたいだけ
なんだろうと思い、そのままにしておいた。
ていうか、
どういう経緯で少年野球の監督やってんだ?
