
ドラクエらんど
第15章 ひなた王子
「─そうね、野々村さんの言う通りよ。これはあの有名なRPGゲームなんかじゃない…。私たちはどこぞのよくわからない組織に実験台にされたのよ」
「実験台っ……!?」
ガタッ……
「!?」
その時、オレたちの後ろにある掃除道具入れのロッカーから音がした。
「誰っ……!」
オレたちは息を飲む。
まさか……こんなところにも"奴"が!?
つくし先生はすぐさま、あらかじめ棚から出しておいたオキシドールのボトルを握りしめた。
オレは机に置いてあった小さなハサミを手に取り身構える。
至近距離でしか攻撃できないが、ないよりはマシだろう。
ガタガタッ……ガタッ……
再度、音がする。
オレたちはロッカーから距離を取った。
"奴"が出てきたら、真っ先に顔面に蹴りを食らわせる。そして倒れた奴の目にハサミをぶっ刺して攻撃──そう頭の中でイメージして、オレはロッカーを睨みつけた。
ドクン…ドクン……
心臓がうるさく鳴り響く。
失敗したら、オレたちは死ぬ。
これが現実だと思いたくないが…
大人しくなり始めていた廊下側の"奴"が、ロッカーの音で再び暴れだした。
だからこれは、紛れもなく現実なんだ。
「─…っ」
その時、オレの制服の裾を誰かが引っ張った。
野々村ゆりだ。
ゆりは泣きそうになるのをこらえながら震えていた。
