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ドラクエらんど

第15章 ひなた王子

状況は変わっていた。



オレが我を失っている間に、扉には薬品の入った棚がバリケードとして置かれていた。
更にベッドも扉側に移動されている。
窓は閉められ、カーテンは元に戻っていた。



「……ひなた先輩、大丈夫ですか……?」



隣で心配そうにオレを見上げるゆり。



「あ、あぁ……」



こんな時に、人の心配するなんて…。



「とりあえず奴らに侵入されないようにバリケードを作ったわ。でも時間の問題ね…なんとか脱出できる方法を考えないと」

「……つくし先生が一人で?」

「野々村さんと二人でね。あとの二人は……」



そこまで言うと、つくし先生は隅でうずくまっている女子二人に目をやった。
一人は気を失っているが、もう一人は空(くう)を見つめたまま微動だにしていない。



「……」



オレはチラリと野々村ゆりを見た。



……意外と度胸あるんだな。




「…なぁ、先生。どうしてこうなったのか、何か知ってるのか?」



廊下側ではまだ"奴"が唸っている。
唸りながら扉に何度も体当たりしている音が響いていた。



つくし先生はハァッと大きなため息を漏らすと、机の引き出しからあるものを取り出した。



「多分……原因はこれね」



それはスマホだった。



「それが……?」



つくし先生はスマホの画面を見て眉を寄せる。



「今日突然、教頭先生が実力テストを実施すると言い出して、カンニング防止のために生徒たちのスマホを預かったでしょ」

「あぁ…なぜか昼休みまでの四時間もの間な」

「その時、私たち教師のスマホも教頭が預かると言ってね…」



そう言うとつくし先生は、スマホの画面をオレたちに見せた。



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