
齧りかけの林檎
第12章 ● 君とお鍋 ♂side
ふと、おれの後ろに並んでいる
ゆりさんのほうを見ると、
少し緊張したような顔をして
いつ年齢確認されてもいいようにか、
財布の中の、免許証みたいなものを
指先で掴んでいるのが、
チラッと見えた。
クスッ、かわいい。
「お待たせしました、いらしゃいませー」
レジのおばちゃんが
ピッ、ピッ、と商品のバーコードを読み取り、
値段を読みながら
清算済み用のカゴに商品を入れていく。
缶チューハイをピッとすると、
レジのおばちゃんは
前に立っていたおれを見て、
「はい、108円が2点」
と、身分証明書の提示を求めてこなかった。
