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A heart and wound

第1章 想い

翔『…俺もさ、あいつのこと、ぜってー忘れらんねーって思ってたんだけどさ、雅紀に告られて、考えて。…何も聞かずにそばで笑わせてくれた雅紀に何か返したいって思って…』

…俺は?

俺はどうなるの?

俺は、1番近くで支えてたつもりだよ?

和『…そっか。』

翔『うん。…和には伝えたくて。その…色々迷惑かけちゃったし。』

和『迷惑じゃないですよ。…雅紀に泣かされたら、いつでも俺のとこ来て下さい?また…相談乗りますから。』

…臆病な俺は、たった一つの伝えたいことが言えなかった。だって…

翔『ん、ありがとう。…飯、どこ行きたい?』

翔さんの顔は今まで見たことのないような、明るくて、少し照れ臭そうな、笑顔だったから…。

…今でも、俺が先に気持ちを伝えてたら。

…なんて思わないわけじゃない。

そんなこと考えても、仕方ないって分かってても。

翔「…にの、大丈夫?考え事?」

その声に反応して眼を開くと、翔さんが俺の顔を覗き込んでいた。

和「…変な顔してました?」

翔さん、俺のこと気にしてくれたの?…にやけそうな顔を必死に堪えた。

翔「うん、難しそうな顔してた。なんか悩みごと?俺でよければ聞くよ?」

和「…んー最近疲れてるんですかね?でも、大丈夫です。…なんかあれば聞いてください。」

まさか、あなたのことです、なんて言えないし…

翔「ん、わかった。無理すんなよ。」

そう言って、俺の頭をくしゃっと撫でると、俺の隣に座り新聞を読み始めた。

胸がドクドクと、音を速めた。

…俺は、撫でられた頭を触り、下を向いて、にやけた。

この人は、誰にでも優しい。

分かってるけど、それでも、そんな所が好きで好きでたまらない。

自分のことより、他人のことを1番に考えて、そのせいで、1人で傷ついて、それを隠そうとする、謙虚で優しいひと。

そんな傷ついてる翔さんを、そんなに心を病む必要ないんだよ、って抱きしめてあげたい。

俺は、もう引き戻すことが出来ないほどに、この人に溺れている。

…この人が、俺を愛してくれることはないと分かっていても。

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