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A heart and wound

第6章 揺らぎ

和「…翔さん?」

翔「あ、出たの?」

風呂を上がったらしいにのが、ベランダに顔を出した。

和「まーた、そんなに吸って。」

気付けば、俺はもう3本目のタバコに火をつけていた。

翔「…なんか、無性に吸いたくなって。」

笑って、そう返すと、

和「まあ、そういう時あるよねー

俺も、1本ちょーだい。」

そういうと、すっと俺の手元にあったパックから、1本抜き取った。

翔「…ん。」

手に持ってたジッポで、にのが咥えているタバコに火をつけた。

和「翔さん、ホストみたい。」

そういって、ケラケラ笑いながら煙を吐き出した。

翔「うっさいよ。…せっかくつけてあげたのに。」

和「…はは、だって、すっごく自然にやるんだもん。

…てか、中で吸わないの?寒くない?

前は、普通に家の中で吸ってたのに。」

翔「…雅紀が、さ。

そんな気い使わなくていいって言われるんだけどさ。
…やっぱね。」

和「…あー、なるほどね。

やめたもんね、雅紀。
病気、しちゃったしね。

大事にしてるんだ?

…やっぱり優しいね、翔さん。」

翔「俺は…優しくなんて、ない。

…みんなのこと、傷付けてばっかりだ。」

タバコを灰皿に押し付け、俯いた。

すると、にのの手が伸びてきて、俺の頭を撫でた。

和「ばっか。

翔さんは悪くないって言ってんじゃん。

翔さんが…優しいだけ。」

翔「そんな、俺のこと甘やかさないでよ…

ほんとは、にのだって…」

涙が出てきそうなのを、ぐっと堪えた。

…俺って、こんな泣き虫だったっけ?

にのは、ため息をついてタバコを乱暴に灰皿に押し付けた。

…やっぱり、さすがに怒って…

次の瞬間、肩を掴んで思いっきりにのの方を向かされたかと思うと、ぎゅっと抱きしめられた。

…少しだけ見えた、にのの顔は悲しそうに歪んでた。

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