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A heart and wound

第6章 揺らぎ

…なんだか、無償にタバコが吸いたくなって、ベランダへと出た。

雅紀と付き合うようになってから、なるべく外で吸うようにしている。

キンっといういい音が、耳に残る。

…タバコをおいしいだなんて思ったことはない。

ただ、煙を肺に入れて出すという行為が、妙に落ち着くというだけ。

体に悪いのはわかってるし、雅紀にもせめて本数減らしたら、と言われているけど。

…人に言われてやめれたら、苦労しないよな。

もう、吸うのがクセになってるし。

昔は、この煙に包まれているのが、少し不快だったけれど、今は逆に心地いい。

外は、少し肌寒くて、空は雲で覆われていて、星も月も、隠れてしまっていた。

…俺の心ん中と一緒。

真っ暗で、ぐっちゃぐちゃで。

強がって、大丈夫だから、なんて言ったけど、本当ににのがいてくれてよかった。

…智くんは、俺にとってずっとずっと、憧れの存在で、かまいたくなるけど、だけど、兄貴みたいな、親友みたいな、特別な人。

いつも、俺に頼ってくれて、俺も安心して頼れて、勝手に智くんも、俺と同じような気持ちなんだと思ってた。

…あの時の智くんの顔が、脳裏に焼きついて、離れなかった。

それに、雅紀のことも。

今日の収録中も、めちゃくちゃ心配そうな顔で、俺を見てた。

着信や、メールも、1件や2件じゃなくて。

今日顔色悪かったけど、なんかあった?とか。

少しでいいから、声聞かせてとか。

一言、一文、全てから雅紀の気持ちが伝わって。

…涙が出てくる。

だけど、どんな顔して会ったらいいの?

智くんのことを、言うわけにはいかない。

そんなの…雅紀にも、智くんにも、悪い。

俺、どうしたらいい⁇

何が正解⁇

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