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A heart and wound

第6章 揺らぎ

和「ど、どしたの、翔さ…」

翔「…少し、このままでいていい?」

そう言った翔さんの声も、体も、微かに震えていて。

正直、ちょっと理性抑えるのに必死なの、ずっと。

だけどね?

…嫌、なんて言えるわけないでしょ?

俺は、腰に回っている翔さんの手をそっと外すと、くるりと振り返り、翔さんをひょい、と抱き上げた。

翔「ちょ、にの⁈」

そう言って、俺の腕の中で暴れる翔さん。

和「…ちょっと大人しくして。」

そんな暴れられても、なに言われても。

…おろさないよ?

翔さんが、こんなに素直に甘えてくれることなんて、珍しいんだから。

それだけ、堪えてるってことなんだろうけど。

リビングに入ると、ソファに、翔さんをそっと横たわらせた。

顔を覗き込むと、少しムスッとしてる翔さん。

和「…なんですか、その顔。」

翔「別に…なんでもない。」

…なんとなく、言いたいことは分かるけどね。

俺は、ムスッとしたままの翔さんを、正面から抱きしめた。

和「…こうやって、抱きしめたかったの。」

翔「…それにしたって、あんな抱き上げ方ないと思う。」

…あ、やっぱり。

そこで拗ねてたんだ。

…肩に担いだこと。

翔「俺は、荷物か何かかよ…」

そう言って、だけど大人しく俺に抱きしめられたまま。

和「えーこんな大きな荷物いらなーい。」

クスクス笑うと、耳元で翔さんのため息が聞こえた。

…仕方ないじゃん。

今の、俺と翔さんの関係は…ただのメンバーなんだから。

他にどんな抱き方できるっていうのよ。

ちゃんと分かってんのかな?

前とは、違うんだってこと。

まあ、俺も。

本当は、雅紀に言うべきだって分かってるし、翔さんのことは雅紀に任せるべきだって分かってる。

けど、こうやってしちゃうのは、

…やっぱり俺も、翔さんのこと諦められないから。

俺の方が、翔さんのこと分かってるって思ってるから。

…なのかな。

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