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妖魔滅伝・団右衛門!

第7章 さすらい団右衛門

 
 団右衛門は胸を張り、迷いなく言い切る。それは、何も告げず飛び出した人間の言動ではなかった。

(やっぱり、式神だけじゃなく自分の足で調べて正解だったな。木の子は森の力で、傷を癒やす事も出来るはずだ。万が一嘉明が怪我をしても、治してやれる)

 ふと頭に浮かぶのは、嘉明の怪我した足。飛び出して時間が経っているので、おそらくもう痛みは消えているだろう。

(大丈夫かな、あいつ)

 遠い京の地でも、鬼の気配は頭に引っかかる。鬼が、なお嘉明を餌として狙っているのは明らかだ。動きがあればすぐ戻れるよう気をつけてはいるが、さすらい旅の途中、嘉明を一人にする不安を拭う事は出来なかった。

(……いや、大丈夫だ。あいつはただ守られるだけの男じゃない。オレがしばらく離れていても、自分の身は守れるはずだ)

 不安が過ぎるたび頭に浮かべるのは、大蜘蛛や鬼相手にもひるまない嘉明の姿。嘉明自身が団右衛門に話した通り、信頼するに値する力は備えているのだ。

(あいつはオレを信じてそばに置くんだ。オレもあいつを信じないでどうする。あいつは……強い)
 

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