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妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
「八千代にどんな話をしたのか、後でそれとなく聞き出してみる。そこで話に矛盾が出れば、嘘つきは確定だ。山中村の存在も調べてみよう」

「しかし、人手はどうする? こちらは既に部下を殺されている。下手に少数で動かせば危険だが、あまり大勢を派遣も出来ない。確実に秀吉様へいらぬ勘ぐりを与えてしまうからな」

 嘉明は自身の両腕を前に組み悩むが、団右衛門は首を振る。

「そんな時こそ退魔師の出番さ。ほら、こんな風にな」

 団右衛門は立ち止まり袖から札を出すと、それを放り投げた。するとそれは煙を上げ、団右衛門そっくりな人間へと変化した。

「いわゆる式神って奴。戦う訳じゃなし、これならあんたが軍勢を動かす必要はないだろ?」

「確かに……見事なものだな」

「仮に式神が殺されたとすれば、それは山中村を調べられたら困る奴がいる証拠だ。そして山中村の話が嘘でも、あいつは黒。時間は少々掛かるが、真実はいずれ分かるはずだ」

 団右衛門は、自分そっくりの式神の背を押す。すると式神は廊下を走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。
 

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