
妖魔滅伝・団右衛門!
第5章 悠久と団右衛門
(それをなんとかするのもオレの仕事、か? ったく、確かに敢えて懐に置いときゃ監視はしやすいが、危険極まりねぇぞ)
「……分かった分かった、じゃあ、ひさつね……だったか? あんた今日から、馬番でも、草履取りでもなんでもやって仕えればいいだろ」
団右衛門が投げやりに答えると、悠久は目を丸くしたまま聞き返す。
「良いのですか……? わしのような身分の者が、殿様に仕えるなど」
「八千代は小姓なんだから、構わないだろ」
団右衛門が答えたにも関わらず、悠久は嘉明に平伏し感謝を示す。八千代も嘉明と別れる心配がないと分かると、同じように頭を下げた。
「お前が本物の兄というなら、八千代に故郷や家族の事を教えてやってくれ。話を聞いている内に、何か思い出すかもしれないだろう。私はその間に、皆へ話を通してこよう」
「はい!」
「団、行くぞ」
嘉明は八千代と悠久を残し、部屋を出て行く。そして廊下を歩きながら、隣の団右衛門へ小声で訊ねた。
「どう思う、団右衛門」
「出任せをその場で考えて話す様子はなかったな。つまり、あいつは正直者か……」
「または、巧妙な嘘つきか」
