テキストサイズ

妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
「で、その途中山賊に襲われた……か」

「もしかすると、村を襲ったその時、既に賊は八千代に目を付けていたのかもしれません。わしはこの通り見てくれが異人ですから、売り払うにしても価値はないでしょう。しかし八千代は、日の本の血もそれなりに継いでいます。考えたくもありませんが、売ればきっと高いでしょう」

 話としては、筋が通っている。肝心の八千代は心当たりがなく、ずっとせわしなく視線を動かしているが。

「あの……嘉明様。八千代は記憶を失っていると言っていました。それは一体?」

 悠久も、合点のいかない八千代の様子は気になっていたのだろう。恐る恐るだが、嘉明に説明を求める。

「私が八千代と出会ったのは、城下の外れにある廃寺だった。やせ細り今にも倒れそうな姿を見つけ声を掛ければ、もう何日も辺りをさまよっていると答えたのだ。記憶もなく、頼る者も金子もなく、ただ戸惑いのまま歩いてきたと」

「そんな……なんて不憫な」

「そのまま放置しては、すぐに死んでしまう。私は孤児として八千代を保護し、城の者に親兄弟を探すよう命じた。しかし城下に、それらしい人物は見つからなかったのだ」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ