
妖魔滅伝・団右衛門!
第5章 悠久と団右衛門
「あー、オレは嘉明の右腕であり天才的軍師の塙団右衛門直之だ」
しかし嘉明は、団右衛門の妙な名乗りに不安を覚え、話を遮ると耳打ちした。
「団、お前はいつから軍師になったんだ」
「いいじゃねぇか、賢そうな奴に尋問される方が、びびって白状しやすくなるだろ?」
「今の一言を聞いて、お前を賢い人間だと判断する要素は皆無だったぞ」
「あーもう、いいから大人しく聞いてろって! 上手く情報聞き出してやるから!」
訝しむ嘉明を黙らせると、団右衛門は咳払いをして、改めて訊ねた。
「とある農村で暮らしていたと言っていたな。それは具体的に言うとどこなんだ?」
「はい、山中村という所で、場所は……」
悠久が村の説明をしているのを聞きながら、団右衛門は悠久の表情をよく観察する。すらすらと答える悠久は、嘘やごまかしを言っているようには見えなかった。
「――しかし、今山中村はありません。賊の襲撃に遭い、村は滅ぼされてしまったのです。母もその時殺され、生き残った村人も皆離散しました。それでわしと八千代も、村を出て、母の故郷である淡路に向かおうと決めたのです」
