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妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
 退魔師にすら気付かれないくらい巧妙に隠せるのならば、誰に警戒しても無意味である。嘉明はますます厳しい顔をして、ぽつりと呟いた。

「……私のせいだな」

 団右衛門が現れる以前出来ていなかった事が、今出来る。すなわちそれは、嘉明の精が影響を与えたせいだろう。それが分からない程、嘉明は鈍くなかった。

「馬鹿、だからオレがいるんだろ? 鬼の手先とか鬼本人が潜んだって、オレがあんたを守ってみせる」

「守る戦は、苦手なのにか?」

「今そういう事言うかよ、ひねくれた殿様だな」

 団右衛門が口を尖らせると、険しかった嘉明の表情が緩む。

「冗談だ。頼りにしてるぞ、団」

 その一言で、団右衛門がどれだけ舞い上がるのか。おそらく嘉明に自覚はないと、団右衛門は分かっている。しかしだからこそ、寄せられる信頼に応えようと奮う気持ちが沸いてくるのだ。

「じゃ、ひとまずはあの男の事情聴取だな。鬼の手先ならボロが出るかもしれないし、オレも同行させてもらうぞ」

「元よりそのつもりで呼び出したのだ。お前は口が上手いからな。頼んだぞ」
 

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