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妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
「しかし捨て置く訳にもいくまい。真に八千代の兄である可能性があるならばな」

「オレ、外から来る奴には注意しろって言ったよな。鬼の手先だったらどうするんだ」

「だからお前を呼んだんだろう、団」

 会話へ自然と組み込まれる自分の名前に、団右衛門は引っかかりを覚え言葉に詰まる。

「……今、なんて言った?」

「聞き返さなければならないくらい長い話ではないと思うが」

「いや、そうじゃなくてさ」

「何が言いたいんだ? とにかく、だからお前の出番なんだと言っているんだ」

 嘉明は動じず、いつも通りぶっきらぼうな顔をしていた。つまり今の会話に、特別な意図も意味もなく、心から自然に団右衛門の愛称を呼んだのだろう。団右衛門はそれを悟ると、はやる胸を押さえ赤く染まる顔を見せないよう背けた。

「あんた、そういうの反則だろ……」

「反則? 依頼を受けて仕事を頼まれているのに、反則とはなんだ」

「いや、だから違げぇよ。んー、まあいい。話を続けてくれ」

 団右衛門はにやつく口元を押さえて隠すが、それでも嘉明は不審な目を向ける。しかし団右衛門が不審なのは珍しい事でもない。嘉明は再び話を始めた。
 

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