
妖魔滅伝・団右衛門!
第5章 悠久と団右衛門
「八千代!」
俊敏な動きに、団右衛門の心臓は飛び跳ねる。が、よくよく見てみると、それは鬼の体格と似てはいたが、皮膚は団右衛門や八千代と同じ色をしていて、角もない人間だった。
八千代を押し倒した二十代も半ばであろう人間は、八千代を強く抱きしめはらはらと涙を流す。
「生きていたんだな、八千代……」
「え?」
男の呟きが八千代の耳に届いたその時、嘉明の家臣達が八千代ごと男を囲み刀を向けた。
「嘉明様の列を乱すとは、何事だ!」
「事によっては、その命ただでは置かぬぞ!」
すると男はようやく八千代から離れ、すぐに平伏する。
「申し訳ございません! この小姓……八千代は、わしのずっと探していた、生き別れの弟なんでございます! ようやく見つけた喜びで、つい……けっしてお侍様の邪魔をするつもりではありませんでした」
「生き別れの?」
男は地面に額をつけながら頷き、さらに弁明を続けた。
「はい。二年前、母の故郷である淡路へ向かう最中でした。道中わし達は山賊に襲われ、八千代はさらわれてしまったのです。もう殺されてしまったかと思っていたのですが……」
