
妖魔滅伝・団右衛門!
第5章 悠久と団右衛門
「なあ八千代、あんたは京に来たのは初めてか?」
団右衛門は、前を歩く八千代がきょろきょろと辺りを見回しているのを見ると、八千代の肩に両手を乗せて訊ねる。
「えっ!? な、なんで急にそんな事……」
八千代は飛び上がりそうな程驚き、振り向いて白黒した瞳で団右衛門を見つめた。
「だって今の八千代、完全におのぼりさんだぞ? あんまりきょろきょろしてると、馬鹿にされるぜ」
「そんなに、挙動不審でしたか?」
「初めて京に来た奴は皆そうなるさ。ま、オレは京に住んでた事もあるから、雰囲気に飲まれるなんて失態はしないけどな」
「団さんは凄いですね。ぼくはもう淡路に帰りたいですよ……」
八千代は溜め息を漏らし、前を向こうとする。が、その時遠巻きに一行を見ている野次馬の中の一人に目が止まった。
「八千代?」
「鬼……」
八千代の小さい唇から呟かれた言葉に、団右衛門は一瞬で警戒態勢に入る。と、同時に、野次馬の一人がこちらに向かって走り出してきた。
「っ!」
大柄な体、金色の髪、それは八千代に飛びつき、地面に倒れる。
