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妖魔滅伝・団右衛門!

第5章 悠久と団右衛門

 
 日の本の中心である、京の都。賑わいで言えば他の所も負けてはいないが、団右衛門は歩く人間一人の気品に違いを感じる。だがその人々も嘉明一行が通れば羨望の眼差しを向けた。

 注がれる視線に、団右衛門は鼻を高くする。皆から注目され、尊敬される。武士や貴族でなければ、この優越感は味わえない。だが貴族にばかりはそうそうなれないので、やはり団右衛門が目指すべき場所はここであった。

(いつかあいつの隣に立って、騒がれたいものだな。いや、騒がれてみせるさ。そのためにも、何か武功をあげないとな)

 京の周辺は、既に豊臣により平定されている。が、まだ槍働きの機会が失われた訳ではない。今回の茶会だって、これからのために行われる政の一環なのだ。

 しかし今団右衛門に出来るのは、身辺の警護のみ。京には京で妖魔の気配はあるが、ひとまず襲ってくる様子はない。元より京を拠点にしているだろう退魔師に加え、団右衛門、おそらくもう京に滞在しているだろう清正もいるのだ。まともな妖魔なら、この状態で動く可能性は低いと予想出来た。

 今は武士としての勤めを果たすため、団右衛門は歩く。京の屋敷は、もうすぐだった。
 

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