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ワタシの履歴

第35章 複雑②

しばらく飲んでいて、ふと腕時計を見ると、23時をまわっていた。

品川からマンションまでは、電車で1時間位だ。

終電に間に合わせる為、お会計を済ませてバーを出た。

私は帰るつもりだった。

しかし、洋クンはそれを許さなかった。

「ねぇ~、カラオケ行こうよ~」

やはり彼は強がっていたようだ。
完全に酔っている。
ふらつく体が物語っている。

「でももう11時過ぎてるし電車無くなっちゃうよ」

私は少し困った顔をして答えた。

すると洋クンは、子供のように駄々をこねて言った。

「いぃじゃ~ん!俺横浜だから輝ちゃんと遠いしなかなか会えないし~カラオケ行かなきゃ帰らな~い」

『なんなんだ…』

半ばうんざりしながらも、何度も強引に言ってくる洋クンに、私は承諾した。

ママには『酔っぱらっちゃったからそのまま友達んちに泊まる』と、嘘のメールをし、カラオケに向かった。

―私は、相当嫌いな相手じゃない限り、スッパリと断る事がなかなか出来ない…正確には、出来なくなった、だ。

相手に嫌われるのがイヤだから。
八方美人だから。

それは、過去の経験から。

例え仲良くなっても、私は心の内をなかなか見せる事は出来ない。

それは、心から相手を信用していないから。

女の友情なんて、いとも簡単に壊れる。

そして、シカトされハブられた事により、一人になる恐怖を味わった私は、人に嫌われるのが怖い。

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