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霧霞ノ桜蕾

第2章 滴ル血ノ一滴マデ*近親相姦/血縁/禁断

「───嘘つき」

「──?はる…─、…っ!!」


首筋に、やわらかい晴樹の髪が擽り
その瞬間、が…っと血が出るんじゃないかってくらい強く首元を噛まれた。

ぺろ、と噛み痕が付いたであろう部分を
舌でなぞられる。

混乱と、哀れ過ぎる期待。


「…好き。好きだよ父さん」

「はる、き─」


お酒と、高鳴りで火照った身体が
晴樹のぬくもりと、石鹸の香りに包まれる。

──高鳴り続ける鼓動。


「…ねぇ俺、可笑しいのかな」

「はる…──」

「父さんを独り占めしたい。
出来る事なら鎖で縛って監禁して、何処にも行けない様に─…
俺以外の人間と話したり、触れ合ったり出来ない様に拘束して。
─…そういうのを見るだけで、嫉妬で狂いそうになるんだ。
父さんをめちゃくちゃにぶっ壊して、犯して。
優しくしたいのに、止まらなくなる」

「晴樹─…」

「ねぇ父さん…?俺、可笑しいのかな……?」


苦しそうに顔を歪め、
今にも泣きそうな、哀しい微笑み。

気付いた時にはその背中を、強く抱き締めていた。

晴樹の体重が全て、身体に伸し掛る。

その重みすら、愛おしくて。
じわ…と涙が滲む。


「──晴樹」


さらさらしている晴樹の髪を、そっと優しく撫でる。

晴樹のぬくもりが、じわじわと
まるで侵蝕していくかの様に身体に染み渡る。


「──父さん」


晴樹の透き通った綺麗な紅色の瞳が、
僕を捕らえて離さない。

吸い込まれていく様に、近付く距離。

浅い、息遣い。


「──…暁、さん─」


どちらのモノかさえ分からなくなりそして、
絡み合う鼓動と鼓動。

髪を撫でていた手を、す…と頬に移す。

──あったかい─…。

…きっとそれは、
理由なんて、理屈なんて存在しない。
ただただ、愛してるんだ。

腕の中で鼓動を奏でる
“雪代晴樹”という存在全てを。

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