テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 深呼吸してから、ゆっくりと障子戸を開いた。
「良かった! 返事がないから、どこかに出かけてるのかと思った。灯りがついてるのに妙だとは思ったんだけど」
 小紅は無邪気な顔で栄佐を見上げていた。信頼しきった、その黒い瞳を見ていると、栄佐は今し方の己れの想像があまりにも浅ましく、到底眼を合わせていられなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ