テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 この娘は一度、俺に陵辱されたのに、今もこうして信じているばかりか変わらぬ想いを寄せてくれている。そのいじらしい心根を思えば、二度とこの女に無理強いして泣かせたりしてはならないという想いが強くなる。
 冷たい水を飲んだせいで、火照った頭も身体も幾ばくかは落ち着いて、少しはまともなことを考えられるようになったらしい。
 栄佐は努めて優しい笑顔になることを祈りながら、小紅に問いかけた。先刻まで繰り広げていた淫らな妄想のことなど、口が裂けても小紅に話せるはずもない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ