テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 昂ぶった身体に籠もる熱を持て余しかね、栄佐は勢いよく立ち上がると、三和土に降りた。水瓶から柄杓で水を掬い、ゴクゴクと咽を鳴らして呑む。
 と、腰高障子の向こうに人影が映った。
「栄佐さん?」
 当の本人が現れ、流石に栄佐も平静ではいられなかった。息を呑んだが、あまりに無反応でいるのもかえって不自然に思われるだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ