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BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

「地味で人見知りで、たいして顔もよくないくせに…一颯君を好きになるなんて、ずうずうしいにもほどがあるのよっ!!!!」

「ちょ、まりあちゃ…」

高羽さんの言葉も、頭に入ってこない。 僕の頭の中は、一颯君のことで一杯で…
全部…全部、僕に同情してやってくれてたんだって思ったら、悲しくて仕方なくて……やっぱり、僕の気持ちも、存在も、一颯君にとっては面倒なものでしかないのかな…

「男が男を好きになるなんてありえないでしょ!!? 気持ち悪いのよっ!!!!」

「っ…………」

「なにしてんの?」

「「!!!!」」

こみ上げてきた涙が溢れそうになった時……高羽さんの荒い息遣いしか聞こえなかった教室に、いつかの日のように、低く冷たい声が響いた。
四人一斉に、声がした方を振り向く。
僕は…一瞬、自分の目を疑った。 だって、教室の入り口には…

「い…ぶき…君…」

今オーディションを受けているはずの一颯君が立っていたから。 しかも…

怖っ…!! な、ななな、なんでそんなに怖いか、顔してっ…

あの日とは比べ物にならないくらい、怖い表情を浮かべている一颯君。
一颯君の姿を見たら、先程の高羽さんの言葉を思い出してしまって……

「ひっ…ぅ…ッ…」

恐怖も手伝って、僕は涙を溢れさせてしまった。

涙をポロポロと流す僕を見て、一颯君は足早に僕の傍に来ると…

「大丈夫か?」

って、すごく優しい手つきで僕の流す涙を拭ってくれたんだ。
僕のこと迷惑だって思ってるのに、こんな時でも優しくしてくれる一颯君。 僕、余計に涙を溢れさせちゃって…
一颯君に触れられて、こんなに胸が痛むのは初めてだった。


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