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BL~中編・長編集2~

第13章 ~天然男子の純愛~

「い、一颯君!! そいつに構わない方がいいよ!!」

「え?」

僕の涙を拭っている手を止め、高羽さんを振り返る一颯君。
さっき、もう逃げないって言ったばかりだけど…僕、この場から逃げ出したくてたまらなかった。 でも…一颯君は両手で僕の頬を包むようにして涙を拭ってくれていたので、手は止まっても、その位置に置かれたまま。 だから、逃げることもできなくて…

「ぅっ…」

一颯君の視線が僕から外れただけで、なんだかとても悲しくなって…僕はまた涙を溢れさせる始末。
嫌われてるってわかってる。 だから、一颯君に無理させちゃいけないって思うのに…やっぱり、構ってほしいわけで…

「ふぇ…っ…ひっ…」

考えと気持ちが矛盾していて、どうしたらいいのかわからなくなってしまった。
振り返った一颯君が僕から手を離さないのを見て、高羽さんは一颯君の腕を掴むと、無理矢理僕から引き剥がした。

「ちょっ…」

「こんな奴に触ったら、一颯君が汚れちゃうよ?」

「? なに言って…」

一瞬…ほんの一瞬だけ、心配そうに一颯君の腕を掴む高羽さんと目が合った。
そしたら、彼女…ほんの少し、少しだけ口角を上げて笑ったんだ。
背筋が凍るって、こういうことを言うんだね。
僕…彼女が、一颯君に何を言うつもりなのか直感的にわかった。 でも…逃げ出したいのに、体は全く動いてくれなくて…

「そいつね、一颯君のことが好きなんだって。 友達としてじゃなく、恋愛感情で。」

「え…」

「っ…!!」

あぁ…言われちゃった。 高羽さんは僕を見て勝ち誇った顔をし、また心配そうな表情を浮かべて一颯君に向き直った。

「気持ち悪いよね? 今まで、一颯君が同情で仲良くしてあげてただけなのに、勘違いして、そういう対象として見られてたんだよ?」

「…しお…」

「……っ!!!!」

その先の言葉なんて、聞きたくなくて…聞けるわけがなくて、一颯君の口から直接、僕を拒絶する言葉を聞いたら、もう二度と立ち直れる気がしなくて…
僕は、扉に向かって全力で走った。
いや…

走ろうとした。

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