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「再会」と呼べる「出会い」

第18章 冷 え

部活見学者は
昨日に比べると少なかった。

次朗君に
彼女が出来たということと、
隠土先生に婚約者がいる
という次朗君の暴露が、
二人を目的に集まる
女の子達を幻滅させたのだ。


なので

見学に来てくれたのは
本当に料理に興味がある子と、
彼女がいようが
婚約者がいようが
めげない女の子達に限られた。


「落ち着いたわね」

「そうだね」

スミレちゃんが
安堵のため息をついた。


「やる気がある子が
 入ってくれるといいけど」

「昨日から
 引き続き来てくれてる子も
 何人かいるし
 見込みありそうだよ」


昨日、
大人数で混沌している中
自ら進んで
アイデアを出してくれる子もいた。

自分では思い付かないような事を
学べるのは凄く楽しい。

誰かと料理をするのは
そういう利点があるんだよね。

だから私は部活が大好きだ。


…本当はエミにも
きて欲しかったな。

一緒に料理していた時間が
とても楽しかったのは事実で、
いい思い出だ。



「お団子のスープ美味しい!
 中はエビ?
 お出汁も凄くいいね」

野菜の差し入れに来てくれた
山ちゃんとミッチに
窓越しにおすそ分けをする。

野菜の差し入れに来てくれる
園芸部さんに
私達は試食という形で
お返しをする。

「これ
 良かったら持ってって」


私はタッパーに入れた
くるみダレのお団子を渡した。

「やった!ありがとう」




次朗君がいないのは
少し寂しかったけど、
料理に集中出来たし楽しかった。



見学者の中に今日も神鳥さんが
いなかったのは残念だったけど…

見たかったな
隠土先生とのツーショット。


次朗君が部活を休んだのは
神鳥さんと帰ったからなのかな。

そんな風に
頭の中で巡らしていると
少しだけ心が冷たくなった。


『次朗君と神鳥さんが
 付き合っている』

フリだとわかっていても
私はどこかで辛かった。






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